米上院でクラリティ法の手続き採決を控える中、修正案を巡って銀行業界と暗号資産業界の双方から異論が出ている。米銀行業界の8団体は上院指導部に対し、ステーブルコイン保有者への報酬に関する規定を見直し、規制を強化するよう求めた。
9月15日付のDecryptなどによると、8団体は、最近修正された法案がステーブルコイン保有者に対し、預金金利に類似した支払いを事実上認めかねない例外を残しているとして懸念を表明した。
8団体は、ジョン・チューン共和党上院議員とチャック・シューマー民主党上院議員に宛てた共同書簡で、顧客のステーブルコイン保有残高、保有期間、取引関係の継続期間に応じて変動し得る報酬に関する文言の削除を要請した。書簡には、米国銀行協会、銀行政策研究所、米国独立コミュニティ銀行協会など8つの銀行関連団体が名を連ねた。
各団体は、法案がステーブルコインの報酬と利息を区別しようとする方向性自体には賛同するとしつつ、現行条文には禁止規定を潜脱できる余地があると指摘した。とりわけ、ステーブルコイン保有に連動した支払いを制限する条文については、関係文言の削除に加え、支払い方法の類似性を判断する基準も見直すべきだと主張した。預金金利に近い性格を持つインセンティブも規制対象に含めるべきだ、との立場だ。
また、認められる報酬であっても、顧客の残高や保有期間、取引関係の継続期間に応じて変動し得るとする規定は削除すべきだと訴えた。銀行業界は、利息の支払いは通常、残高や期間を基に算定されるため、この条文は前段の禁止原則と整合しないおそれがあるとみている。
銀行業界は、こうしたステーブルコイン報酬やインセンティブが銀行預金の流出を招き、住宅ローンや農業、中小企業向け融資の原資を弱める可能性があると警戒する。特に、地域銀行や公共性の高い融資を担う金融機関への影響が大きくなり得ると主張した。ただ、書簡では、想定される預金流出の規模や、それに伴う融資縮小が実際に起きたことを示す具体的な根拠は示していない。
銀行業界は、法案に盛り込まれた預金流出時の「サーキットブレーカー」にも反対している。修正案では、ステーブルコインへの資金移動によって地域銀行から相当規模の預金流出が発生した場合、各州の財務長官が報酬支払いを制限できる仕組みを設ける一方、この権限は法施行後18カ月で失効する時限措置としている。
各団体は、相当規模の預金流出が起きた後に発動する仕組みでは、実効的な安全装置にはなりにくいと指摘した。預金流出が現実化してから対応するのではなく、法案の段階で預金金利のように機能するステーブルコイン報酬やインセンティブを封じるべきだとしている。
修正案にはこのほか、ドナルド・トランプ米大統領を巡る利益相反論争に対応するため、公職者倫理に関する条項も盛り込まれた。州司法長官が公職者による規定違反を執行できるようにする文言が追加され、ホワイトハウスの暗号資産政策責任者パトリック・ウィットは、トランプ大統領がこの倫理条項を承認したと明らかにした。
一方、上院銀行委員会の民主党議員やエリザベス・ウォーレン民主党上院議員は、州司法長官が大統領を含む公職者を実際に起訴できない点を問題視している。倫理条項は加わったものの、実際の執行範囲は限定的だとの見方だ。
暗号資産業界も修正案に不満を示している。顧客資金を直接扱わない開発者を保護するブロックチェーン規制明確化法案の条項から、連邦刑事法上の保護が削除されたためだ。Coin Centerのジェイソン・ソメンサットは、規制上の保護が明文化された点は前向きに評価しつつも、刑事法上の保護が除外されたことには失望を示した。
もっとも、業界全体では、開発者保護の後退が法案全体を頓挫させるほどの争点にはならないとの見方もある。業界関係者によれば、当該条項への不満は共有されているが、それを理由に法案全体に反対する動きには広がっていないという。
政策サイドでは、法案可決の可能性をなお重視する見方が強い。パトリック・ウィットは今回の修正案を「最善であり最終提案」と評価し、最初の採決についても好感触を示した。その上で、60票を確保できるかどうかは、政策というより政治判断の問題だとも述べた。
上院は16日、法案を次の段階に進めるための手続き採決を実施する予定だ。可決には60票が必要となる。銀行業界がステーブルコイン報酬の規制強化を求め、暗号資産業界が開発者保護の縮小に反発する中、修正案への超党派の支持が実際の票につながるかが焦点となる。