米暗号資産市場の構造改革を担う「Clarity法案」について、JPモルガンが年内の上院通過見通しの後退に警鐘を鳴らした。審議の遅れが長引けば、市場の不透明感が強まり、機関投資家の参入やブロックチェーン金融インフラの整備に影響が及ぶ可能性がある。
CoinPostによると、JPモルガンの分析チームは最近公表したリポートで、Clarity法案の年内上院通過の見通しが後退したことが、暗号資産市場の重荷になり得ると指摘した。
予測市場でも法案成立への見方は後退している。Kalshiでは年内可決の確率が37%まで低下し、Polymarketでも26%と、いずれも年初来の最低水準となった。
JPモルガンは、上院が夏季休会前に別の法案を優先しているほか、倫理規定、規制当局の権限配分、ステーブルコインの利払い、分散型金融(DeFi)、マネーロンダリング対策(AML)などの主要論点で与野党の隔たりが埋まっていないと分析している。
Clarity法案は、米商品先物取引委員会(CFTC)と米証券取引委員会(SEC)の暗号資産に対する監督権限を明確化する市場構造法案だ。デジタル商品はCFTC、デジタル証券はSECが所管する枠組みを定めている。
法案は昨年7月に下院を通過したが、ステーブルコインの利払いを認めるかどうかや、政治家による暗号資産関連の開示義務を巡る議論が続いており、上院審議は遅れている。
JPモルガンは、法案が成立すれば、機関投資家向けの市場インフラ整備が進み、DeFiやステーブルコイン発行体を巡る規制の不確実性も大幅に和らぐとの見方を示した。
さらに、一部取引が海外市場から米国の規制下に移ることで、米国内の売買高と流動性が増加し、証券会社や取引所、マーケットメイカー、カストディアン、銀行系プラットフォームの参入も活発になると予想した。
一方で、現行案は市場に追い風となる内容ばかりではないとも指摘した。一部条文については、かえって機関投資家の参加を制約する可能性があるとしている。
具体的には、DeFiプラットフォームがSECやCFTCの直接監督を受けずにトークン化証券やトークン化デリバティブを取引できる仕組みや、一部の暗号資産事業者が銀行や証券会社に近い機能を担いながら、AML義務が十分に課されていない点を問題視した。
また、JPモルガンは、法案審議の長期化によって、ブロックチェーン金融サービスの発展の方向性そのものが変わる可能性があるともみている。トークン化資産やブロックチェーン基盤の金融サービスが、パブリックブロックチェーンよりも既存の金融インフラ中心に取り込まれる公算が大きいという。
業界側でも早期審議を求める声は強い。暗号資産業界団体のCrypto Council for Innovationは最近の報告書で、市場構造法案の遅れによって、米国がデジタル資産規制と技術革新の主導権を他国に明け渡し、長期的にはドルの基軸通貨としての地位にも悪影響が及びかねないと主張した。
上院での交渉はなお最終調整段階にある。共和党のトム・ティリス上院議員と民主党のルーベン・ガジェゴ上院議員は30日、倫理条項を巡る新たな妥協案をホワイトハウスに提出した。
民主党は、ドナルド・トランプ大統領が就任前に発行したミームコインや、大統領一家が関与するWorld Liberty Financialを利益相反の事例として挙げ、より厳格な倫理基準の導入を求めている。
上院は8月7日から夏季休会に入る予定だが、共和党のジョン・スーン上院院内総務は別法案を優先する姿勢を崩していない。このため、Clarity法案の審議は9月以降の会期に持ち越される可能性が高まっている。