米上院の与野党議員は、暗号資産市場構造法案「クラリティ法案」の倫理条項を巡る新たな折衷案をまとめ、ホワイトハウスに提出した。もっとも、上院は8月7日から休会に入る予定で、本会議入りに向けた手続きはなお進んでおらず、休会前の採決は不透明な情勢だ。
The BlockやCoinDeskなどの報道を基にCoinPostが31日(現地時間)に伝えたところによると、共和党のトム・ティリス上院議員と民主党のルーベン・ガジェゴ上院議員が、クラリティ法案の倫理条項に関する折衷案をホワイトハウスに提示した。
クラリティ法案は、米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)の暗号資産規制権限を整理する包括的な市場構造法案。5月に上院銀行委員会を通過している。
折衷案の具体的な条文は公表されていない。ただ、政府高官による暗号資産事業への関与をどこまで制限するかを巡り対立してきた与野党の隔たりを、一定程度埋める内容とみられている。
争点の中心にあるのは、ドナルド・トランプ米大統領を巡る利益相反問題だ。民主党は、トランプ大統領が就任前に発行したミームコインや、トランプ一族が関与したWorld Liberty Financial(WLFI)を問題視し、より厳格な倫理規定を求めてきた。
先月公表された資産公開文書では、トランプ大統領が暗号資産事業を通じて数百万ドルを受け取ったとする記載も明らかになった。
これまでに示された修正草案は、トランプ大統領の承認を受けた内容だった。公職者本人とその配偶者による暗号資産の発行や支援を禁じる一方、他の家族には適用しないとしていた。
また、執行権限は米司法省(DOJ)に付与し、規定は2029年1月に自動失効する仕組みだった。関係者の間では、この失効条項によって倫理規定全体の実効性が損なわれかねないとの指摘が出ていた。民主党は、ホワイトハウス承認の案だけでは大統領の暗号資産事業への対応として不十分だとみている。
一方で、審議日程にはほとんど余裕がない。上院は8月7日から休会に入る予定だが、現時点で本会議入りに必要な同意動議や討論終結動議は提出されていない。
ジョン・スーン上院院内総務は28日、Fox Newsのインタビューで、政府機関の予算や人事案の処理を優先課題に挙げつつ、クラリティ法案を手続き投票に付す可能性を排除しなかった。ただ、法案が最終可決に至る可能性は高くないとの従来の見方も維持した。
民主党は、利益相反を防ぐのに十分な倫理規定が整うまで反対姿勢を崩していない。共和党内でも、ステーブルコイン利用者への利子付与制度を巡って異論が出ている。銀行業界は、こうした制度が銀行預金の流出を招く恐れがあるとして反発している。
スコット・ベッセント財務長官はSNSで、法案がなお採決に至っていない責任は民主党にあると主張した。暗号資産業界団体のCrypto Council for Innovationも同日、欧州連合(EU)など他地域が規制整備で先行しているとして、米国が法案を成立させられなければ市場規制の主導権を失いかねないと警告した。
こうした中、上院指導部は別の法案を優先しており、クラリティ法案の審議は9月の議会再開後に持ち越される可能性が強まっている。倫理条項で折衷が成立しても、可決に必要な60票の確保と本会議日程の確保という二つのハードルを越えられなければ、法案処理は再び遅れる公算が大きい。