Samsung Electronicsは、DRAMとNANDの生産キャパシティの60〜70%を複数年供給契約で押さえる方針を明らかにした。主要なグローバルデータセンター顧客5社との契約は完了しており、AI需要に関連する追加の大口顧客5社とも最終交渉段階にある。市況変動の影響を受けやすいメモリ事業を、受注型ビジネスへと転換する狙いがある。
同社メモリ事業部 戦略マーケティング室長のキム・ジェジュン副社長は7月30日、2026年4〜6月期決算のカンファレンスコールで、交渉中の案件がまとまれば、DRAM、NANDともに計画生産キャパシティの60〜70%を複数年契約でカバーできるとの見通しを示した。供給の柔軟性を確保するため、全キャパシティの6〜7割を長期契約とする考えだという。
交渉を後押ししたのは、4〜6月期の好調な実績だ。キム副社長は、同四半期のDRAM、NANDのビット出荷量がいずれも過去最高となり、サーバー向けの販売構成比も過去最高を更新したと説明した。DRAMのビット出荷量は前四半期比で10%台前半増え、会社計画を上回った。
4〜6月期の平均販売単価(ASP)は、前四半期比でDRAMが40%台半ば、NANDが60%台後半上昇した。
契約は5年を基本とするローリング方式を採用する。5年契約をベースに、毎年の交渉で契約期間を1年ずつ延長していく仕組みだ。契約履行を担保するため、預託金に近い性格の前受金も契約条件に盛り込んでおり、その約4分の1をすでに受領したという。
前受金の具体的な規模については、顧客とのNDA(秘密保持契約)を理由に開示しなかった。同社は今後、この契約モデルを定着させ、中長期的に受注型事業の比率を一定水準以上に維持する方針だ。
価格設定は顧客群や製品群ごとに変えている。キム副社長は、汎用製品については、市場価格の変動による将来投資リスクを吸収できる水準の下限価格を設定したと明らかにした。
顧客が長期契約を急ぐ背景には、供給不足の長期化見通しがある。キム副社長は、新規ファブ建設からウエハー生産までに3年半超を要するとし、2028年まで大幅な供給拡大は見込みにくいとの認識を示した。今年満たせなかった需要が来年に持ち越されることで、2027年の需給逼迫は今年以上に強まり、2028年まで続く可能性があるとしている。
需要の発生経路にも変化が出ている。キム副社長によると、ハイパースケーラーから十分なクラウドキャパシティを確保できなかったAI基盤モデル企業が、ネオクラウド事業者に追加割り当てを要請した。これが、ネオクラウドを顧客に持つサーバーOEMによる大規模なメモリ調達要請につながったという。
さらに、そこでも必要量を確保できなかった企業が、中長期の需要見通しを共有したうえでSamsung Electronicsに直接購入の意向を伝え、複数年供給契約を求め始めたと説明した。
製品需要は下期も高水準が続く見通しだ。キム副社長は、7〜9月期のHBM4売上高が前四半期比で3倍超に拡大し、下期ベースではHBM4がHBM売上高全体の60%を超えるとの見通しを示した。顧客ごとの課題に応じた評価が完了し、下期の立ち上がりに合わせて需要が拡大しているという。
供給面では、月次でのシリコン投入能力の拡張と歩留まり改善を通じて供給能力を高めている。2027年のHBM供給については、主要顧客との協議をすでに終えたことも明らかにした。
NAND市場もサーバー向け中心に構成が変わってきた。キム副社長は、2026年のNAND売上高に占めるサーバー向けSSDの比率が60%を超えると予想した。前年から20ポイント超の上昇になるとしている。
同社は、PCIe第6世代SSDについて主要顧客から性能面のフィードバックを得ている。ボンディング技術と3段積層技術を適用したV10 NANDは、8月中に量産を開始する計画だ。QLC製品のビット出荷量は、下期に上期比で2倍超に拡大する見通しも示した。
顧客構成については、特定顧客への偏りを避けたバランスの取れたポートフォリオを維持しており、この原則を複数年供給契約にも反映していると説明した。すでに契約済みの顧客からも追加供給の増量要請があり、契約顧客数は今後さらに増えるとの見方を示した。
7〜9月期のビットグロース見通しは、DRAMが1桁台半ば、NANDが1桁台後半の増加とした。在庫水準はDRAM、NANDともに大きく低下しているという。
一方で、価格モデルの上限については具体的な説明を避けた。同社は、将来投資リスクを一定程度吸収できる価格体系を契約に反映することを目指すと述べるにとどめた。生産キャパシティの60〜70%を長期契約で確保する一方、残る数量の価格弾力性が収益変動に影響する可能性がある。
キム副社長は、来年も供給制約が続く市場環境を前提に、HBMとコンベンショナルDRAMの双方で同程度のシェアを目標に、バランスを取りながら運営していく考えを強調した。