暗号資産市場では、機関投資家の参入や実需の広がりを背景に成熟が進んでいる。それでも個人投資家の資金はなお、ファンダメンタルズよりも短期間で大きな利益を狙えるトークンに向かいやすい。専門家はその背景として、投資家心理と市場構造の両面を挙げている。
Cointelegraphが29日付で報じたところによると、こうした傾向はDeFi、ミームコイン、分散型コンピューティングなど、暗号資産市場の各サイクルで繰り返されてきた。
米フィンテック企業Talosで国際市場責任者を務めるサマル・セン氏は、暗号資産が依然として若い資産クラスである点を理由に挙げた。成熟市場のように分析に基づいて価格が形成されるというより、注目度が相場を左右しやすく、資金も話題先行のテーマに流れ込みやすいという。
行動ファイナンス研究者でサンタクララ大学教授のメイヤー・スタットマン氏は、この現象を投資家心理から説明する。投資行動の形は変わっても、人間の本性や願望は大きく変わらず、投資家は最適な資産選択よりも、人生を変えるような結果を求める傾向があるとした。
同氏によると、投資家の資金は心理的に二つに分かれる。生活水準を守るための「貧しくならないための資金」と、住宅購入や経済的自立など、現状を大きく変えるための「豊かになるための資金」だ。
このため、分散投資が統計的に合理的であっても、限られた元手で大きな変化を望む投資家にとっては魅力が薄れやすいという。
MarketWiseも、投資家はリスク自体を求めているというより、「人生を変えるような利益」を取り逃がす不安に反応していると分析した。あわせて、「技術的ブレークスルー」と「投資機会」を混同しやすい傾向も指摘している。
実際、資金フローと価格の動きにはこうした乖離が表れている。DeFiの代表格であるAaveとUniswapは数十億ドル規模の総預かり資産を集めてきたが、価格面ではそれに見合う評価を十分に得ていない。
Aaveの価格は足元で約98ドルと、2021年の高値からなお約85%低い水準にある。一方、Aaveの総預かり資産(TVL)は140億ドルを超え、2025年10月の強気相場のピーク時には370億ドルを上回った。
Kaikoのリサーチアナリスト、トーマス・プロブスト氏は、短期的に特定資産が大きく上昇する局面はあっても、長期ではファンダメンタルズの重要性が増すと述べた。回復力、流動性、ボラティリティが引き続き主要な変数であり、資産が時間をかけて定着するには、強固な市場構造が欠かせないと強調した。
価格推移は、買いのタイミングの重要性も示している。MarketWiseの分析によると、2021年1月にビットコインへ1万ドルを投資していれば、2026年4月時点で2万4000ドル超となり、利益率は141%に達した。
一方、2025年10月のサイクル高値で同額を投じた場合、2026年4月時点の評価額は6000ドルをやや上回る水準にとどまり、38%の損失となる。同時期にAaveを高値追いした投資家は、足元で85%の損失を抱えている計算だという。
機関投資家は、こうした個人投資家とは異なる基準で動く。セン氏は、機関投資家には運用ガイドラインがあり、過度に投機的なリターンを追いにくいと説明。上昇余地より先に、リスク調整後リターン、流動性、カストディ体制、運用の堅牢性を精査すると述べた。
また同氏は、DeFiや人工知能(AI)、ミームコインといったテーマも、当初は技術進展や新たなユースケースから始まるものの、投機資金が流入し始めると、価格はファンダメンタルズを大きく上回るスピードで動きやすいと付け加えた。
暗号資産市場では、実需の拡大や機関投資家資金の流入によって成熟が進む一方、個人投資家の資金はなお短期で大きな利益を狙えるトークンへ向かっている。もっとも、長期的なパフォーマンスを左右する要因として改めて浮かび上がるのは、トークンのストーリー性ではなく、流動性、市場構造、そして持続的なキャッシュフローだ。