Teslaは28日、アリゾナ州の大規模太陽光・蓄電池プロジェクトの発電量の90%と、テキサス州の140MW太陽光発電所の全量を対象とする長期の電力購入契約(PPA)を締結した。AIデータセンターの拡大で米国の電力需給が逼迫する中、工場運営やAI計算インフラ向けの電源を中長期で確保する動きとみられる。
米電気自動車メディアのElectrekによると、アリゾナ州での契約対象は、太陽光509MWと蓄電池360MWを組み合わせた「Project Sterling」だ。開発はKKR傘下のContourGlobalが手掛け、2028年の商業運転開始を見込む。契約金額は公表していない。ContourGlobalは残る10%を保有し、取引する計画としている。
Project Sterlingには、太陽光509MWに加え、出力360MW・4時間容量の蓄電池が併設される。蓄電容量は約1440MWhで、日没後も太陽光由来の電力を送電網に供給できる設計だ。
発電所はWestern Area Power Administrationの送電網に接続し、カリフォルニア市場にもアクセスできるという。TeslaとContourGlobalの取引は今回が初めて。ContourGlobalはこの案件を2024年末に確保し、同社の再生可能エネルギー資産としては最大規模だとしている。
Teslaは同日、テキサス州でもスペインの開発会社ZelestraとPPAを締結した。対象は同州北東部で建設が計画されている140MWの太陽光発電所「Lumen Farm」。EQTが出資するZelestraが開発を担い、2027年に着工し、2029年の商業運転開始を見込む。
価格や用途は明らかにしていないが、ZelestraはTeslaが同発電所の発電量を全量引き取ると説明している。
TeslaとZelestraのPPAは今回が2件目。2024年にはスペイン・カスティーリャ・ラ・マンチャ州の太陽光発電所3カ所を束ねた57MW規模のPPAを結んでおり、米国での契約は今回が初めてとなる。Zelestra米国CEOのフィル・ノース氏は、「信頼されるグローバルパートナーとして、各地域の顧客ニーズに合わせたソリューションを提供できる」としたうえで、「Teslaとの関係を米国に広げられることをうれしく思う」とコメントした。
Zelestraは16GW超の再生可能エネルギー案件ポートフォリオを持ち、BloombergNEFが選ぶクリーンエネルギー販売の世界上位10社にも入る。テキサスではMetaも主要顧客の1社だ。
同社は過去1年間、Metaのデータセンター向け電力供給を目的とした太陽光PPAを相次いで締結してきた。代表例としては、180MWのPalmeraプロジェクトや176MWのSkull Creek発電所がある。これらを基に、440MW規模のテキサス州ポートフォリオで6億ドルのグリーンファイナンスも確保した。Teslaは、Meta向け案件を手掛けるのと同じ開発会社から、ERCOT域内で増加する電力需要に対応する電源を確保する形となる。
今回の2件を合わせると、Teslaは同日に外部事業者が供給する太陽光発電640MW超と、360MWの蓄電リソースを確保したことになる。背景にあるのは電力需要の増加だ。米国ではAIデータセンターの拡大を受けて電力需給の圧力が強まっており、TeslaもGigafactory Texasや拡張中のAI計算インフラに電力を供給する必要がある。
低コストでクリーンな電力を長期にわたり確保する必要性の高まりが、今回の契約の背景にあるとみられる。
注目されるのは、Teslaが太陽光発電設備や蓄電池のメーカーでありながら、今回の2案件ではいずれも外部事業者から電力を調達した点だ。Teslaは系統用蓄電池「Megapack」を生産しており、アリゾナ州ではすでに大規模なMegapack設備も運用している。太陽光パネルやSolar Roofも販売しており、テキサス州では大規模な太陽光パネル工場を建設中だ。
もっとも、Project Sterlingにどの蓄電池が採用されるかは公表されていない。
こうした構図は、Teslaの太陽光事業の歩みとも無関係ではない。Teslaは2016年、当時米国最大の住宅用太陽光設置会社だったSolarCityを26億ドルで買収したが、その後は販売チャネルを縮小し、事業の優先順位は低下した。年間設置量も、SolarCityの最盛期だった約870MWから大きく減少し、ここ数年は電気自動車とMegapackが主軸となってきた。
足元では太陽光事業のてこ入れにも動いている。2025年末に太陽光リース商品を再投入し、今年1月には米国製の太陽光パネルを発売。ヒューストン近郊では大規模パネル工場の建設も進めている。
自社製のパネルとMegapackを持ちながら、実際の需要対応では外部開発会社の発電資産を活用する――。今回の2件の契約は、そうしたTeslaの電力調達戦略を映し出した。特に2028年、2029年以降の電源を先行して確保した点からは、工場運営とAI計算インフラの拡大をにらんだ中長期の調達方針がうかがえる。