NVIDIAのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、AIがホワイトカラーの仕事を大規模に奪うとの見方に反論した。AIが置き換えるのは職種そのものではなく個々の業務であり、生産性の向上はむしろ成長と雇用拡大につながるとの考えを示した。
米Business Insiderが7月28日(現地時間)に報じたところによると、フアン氏はY Combinator Startup Schoolで、AIによって変わるのは「職業」ではなく「業務」だと述べた。
フアン氏は、あらゆる職種がAIの影響で変化するとしながらも、それが直ちに雇用の消滅を意味するわけではないと強調した。「すべての職種は変わる。そして多くの新たな雇用が生まれる。AIが雇用を破壊するという見方は、まったく逆だ」と語った。
同氏の主張の中心にあるのは、職種と業務を切り分けて考えるべきだという点だ。顧客サービスを例に挙げ、電話対応や苦情の受け付け、データベースを参照した応対といった一連の業務は自動化できると説明した。
一方で、個別の業務が自動化されても、職種そのものがなくなるわけではないとも指摘した。「1つの職業には目的があり、その下に複数の業務がある」と述べている。
こうした見方は、AI導入の影響が広がる顧客サービスやソフトウェア開発、各種専門職にも当てはまるという。実際、Uberは先週、顧客サービス部門の人員を1割削減し、その理由としてAI技術を挙げた。
それでもフアン氏は、特定業務の自動化をそのまま雇用縮小と結び付けるべきではないと主張する。
医療分野についても同様の論理を示した。画像診断の読影はすでに自動化が進んでいる一方、放射線科医の雇用自体は依然として増えていると指摘した。
背景には、患者の受診待ちが多い現状がある。AIツールで読影の負担を軽減できれば、病院や医師はより多くの患者に対応できるようになるという。「待機している患者は非常に多い。いまや医師と病院は、はるかに多くの患者を診られる」と語った。
ソフトウェア開発でも同じ変化が起きているとした。開発者の役割は、直接コードを書くことから、Claude CodeやCodexといったAIコーディングツールに指示を出し、その成果物をレビューする方向へ移りつつあるという。
フアン氏は、プログラミングは自動化されやすい業務に近いとしつつも、アイデアや需要の蓄積が大きい以上、むしろソフトウェア人材はさらに必要になる可能性があると述べた。「アイデアと野心の蓄積があまりにも大きい。プログラミング業務を自動化できれば、より多くの仕事をこなすために、より多くのソフトウェアエンジニアを雇える」と語った。
法務テックのスタートアップHarveyも例に挙げた。一部では、同社のツールがパラリーガルの雇用を減らすとの見方があったが、実際には関連する役割への需要が急速に高まっていると説明した。
もっとも、米労働統計局は、2024年から2034年にかけてこの職種の雇用は横ばい、もしくは伸びが限定的になるとの見通しを示している。
フアン氏の発言は、AIが初級ホワイトカラー職の半分を失わせる可能性があると警告してきたAnthropicのダリオ・アモデイCEOの見解とは対照的だ。アモデイ氏はその後、AIが生産性を大きく押し上げる側面にも言及するようになったが、雇用減がAIの本質的な帰結になり得るとの見方は維持している。
これに対しフアン氏は、生産性の向上が雇用拡大を妨げるものではないと改めて強調した。「生産性の向上は成長の古典的な例だ。成長が大きくなれば、より多くの雇用が後からついてくる」と述べた。
AIが働き方を変えるのは確かだが、変化の単位は職種全体ではなく業務の再編にある――。それがフアン氏の一貫した立場だ。