写真=Musinsa

Musinsaの技術組織であるMusinsa Techは、対話型商品検索サービスにモデル・コンテキスト・プロトコル(MCP)を導入し、AIと既存システムの接続を標準化した。一方で、AIが検索条件を常に意図通りに組み立てるわけではなく、品質管理や権限設計が実運用上の課題として浮上した。

Musinsa Techは、「ツールを与えたからといって、AIが常に意図通りにそれを使うとは限らない」として、導入過程で得た知見を明らかにした。

MCPは、AIモデルが外部データやソフトウェア機能を利用できるよう、接続方式を標準化する技術だ。企業がMCPサーバを構築すれば、AIは商品検索や文書参照など、サーバ側で用意した機能を呼び出せる。

ただ、AIがツールにアクセスできることと、開発者の想定通りに使いこなせることは別問題だった。Musinsa Techによると、MCPサーバの公開そのものよりも、ユーザーの自然言語による質問を正確な検索条件へ落とし込むための制御に、より多くの試行錯誤を要したという。

MusinsaのMCPプロジェクトは、昨年第4四半期に社内の自律プロジェクトとして始動した。初期プロトタイプを使ったユーザー調査では、「今週末の結婚式に何を着ればいいか」「黒のメッシュスニーカーでレビュー評価が高い商品は何か」といったように、複数条件を同時に尋ねる需要が確認された。

従来のEC検索では、ユーザー自身がカテゴリやブランド、価格帯などを選ぶ必要がある。対話型AIであれば、自然言語の質問から利用シーンや好み、予算を読み取り、検索条件を自動で組み立てられる。

Musinsa Techは、対話型AIを新たな商品探索チャネルと位置付け、ChatGPT上で自社商品のレコメンド機能の開発に着手した。短期的な購買転換よりも、対話型商品検索の可能性検証と、新たな顧客接点の確保を重視したという。

例えば、「4月の日本旅行に合う服」といった質問に対しては、AIが季節や旅行先の天候、性別などを踏まえて商品を探す設計とした。「総予算30万ウォン以内の割引商品」のような問いでは、予算と割引有無の両方を検索条件に反映する必要があった。

もっとも、ファッション商材に対する要望は定型化しにくい。「ミニマル」という表現1つをとっても、人によって想定するスタイルは異なる。1つの質問に、状況、天候、好み、予算、除外条件が同時に含まれるケースもあった。

既存の商品検索APIでは、こうした複雑な要望を十分に処理しにくかった。商品検索APIは、カテゴリやブランド、価格といった事前定義の条件を中心に設計されているため、AIが自然言語を検索条件へ変換する過程で、文脈が抜け落ちたり、意図しない条件が追加されたりする余地があった。

◆MCP導入後も残る課題、鍵はAIの入力制御

同様の問題は、MCP経由でツールを呼び出す場面でも表面化した。Musinsa Techは「ユーザーが自然言語で問い合わせると、AIが想定範囲を超える不適切なフィルターや集計単位をMCPサーバに渡すことがあった」と説明。「別のLLMで入力値を再整形するなど、複数の手法を試した」という。

AIの判断を別のAIで再検証する方法も導入したが、一貫した結果を保証するのは難しかった。最終的にMusinsaが採ったのは、AIの性能を前提に任せ切るのではなく、AIがサーバに渡せる入力値を厳密に制限するアプローチだった。

そのため、商品検索で使う入力フィールドを細分化し、MCPサーバがユーザーの質問意図をより具体的に区分できるよう設計を見直した。AIに広い裁量を与えるのではなく、性別、価格帯、利用目的、地域、日付などの条件を構造化し、サーバ側で統制する形に改めた。

Musinsa Techは「入力フィールド自体をさらに細かく分け、MCPサーバでユーザーの意図を明確に統制・把握する方式で問題を解決した」としたうえで、「AIの出力にばらつきがある中でも、一貫した品質を維持するのに相当苦労した」と振り返った。

◆個人情報にはアクセスさせず、最小権限原則を適用

AIエージェントが企業システムに接続する以上、権限管理も重要な論点となる。開発段階から、AIが意図しないデータの読み書きを行えないよう、必要な機能と情報だけを許可する設計が求められる。

Musinsaは現在、MCPサービスの対象を、ログインなしで利用できる商品探索機能に限定している。これにより、AIエージェントはユーザーの個人情報や決済・購買データにはアクセスしない。

今後、認証ベースの機能を検討する場合でも、サービスに必要な最小限の情報だけを扱い、ユーザーが情報活用の範囲を明確に認識したうえで選択できるようにする方針だ。Musinsa Techは「入力値の検証とあわせて、MCPの設計段階から最小権限原則を適用すべきだ」と強調した。

◆エンタープライズ普及には認証・セキュリティ標準化が不可欠

業界では、MCPが汎用標準として定着するには、技術仕様とエコシステムがなお十分に成熟していないとの見方がある。AI事業者やクライアントごとに対応方式が異なり、エコシステムが分断される可能性も指摘されている。

Musinsa Techも、主要AI事業者によるネイティブ対応の拡大に加え、認証やセキュリティの標準化が必要だとみている。接続規格だけでなく、企業利用で求められる認証や権限管理の仕組みが整って初めて、本格導入が進むとの考えだ。

Musinsa Techは「主要なAI陣営の大半がMCPをネイティブにサポートし、プロトコルレベルで認証・セキュリティ標準が整備されてこそ、エンタープライズ環境での導入は本格的に加速する」と述べた。

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