米証券取引委員会(SEC)のヘスター・ピアース委員は、暗号資産の規制枠組みを定める「クラリティ法案」が今夏に成立するとの見方を示した。現物市場に対する連邦レベルの監督体制を整え、SECと米商品先物取引委員会(CFTC)の役割分担を明確にする法整備が前進する可能性が出てきた。
1日付のBitcoin Magazineによると、同法案はすでに米下院を通過しており、上院での審議を控えている。
ピアース委員はポッドキャストのインタビューで、同法案について多くの要素を含む包括的な内容だとした上で、上下両院で議論が進んでいることを評価した。法案には、これまで不十分だった暗号資産の現物市場に対する連邦監督の枠組みを整備し、SECとCFTCの監督権限を整理する内容が盛り込まれている。
焦点の1つは、トークンが投資契約に当たるかどうかの判断基準を、より明確にする点だ。ピアース委員は、この枠組みが整えば、第三者によるツールの悪用があった場合でも、開発者の責任範囲を一定程度限定できる可能性があるとの認識を示した。
また、従来の執行偏重のアプローチは、業界を望ましくない方向に導いたと指摘した。一時的なプロジェクトを立ち上げるだけの主体が利益を得やすくなり、健全な参加者と詐欺的な勢力を見分けにくくしていたとの見方を示した。
その上で、足元は規制整備を進める好機だとし、長期的かつ実質的な価値を生み出す製品が必要だと強調した。
暗号資産技術の有用性としては、ネットワーク間での価値移転、高コストな仲介機能の縮小、スマートコントラクトを活用したバックオフィス業務の自動化を挙げた。さらに、トークン化証券については、担保の移転性向上や証券貸借の円滑化に加え、発行体が株主とウォレットを通じて直接つながる可能性にも言及した。
AIとの組み合わせにも触れ、今後はAIエージェントが暗号資産で取引を行うようになるとの見通しを示した。AI規制については、事前に細かく設計するよりも、まず実験を認め、被害が顕在化した段階で対応する考えを示した。一方で、企業がAIを利用したこと自体が、結果に対する責任の免除につながるわけではないとした。
同日公開されたインタビューでは、ポール・アトキンスSEC委員長も同様の方向性を打ち出した。ニューヨーク・エコノミッククラブでの講演後に応じたFox Newsのインタビューで、自由市場資本主義の重要性を強調し、より多くの米国民の市場参加や新規株式公開(IPO)の活性化に向けた改革を進める考えを明らかにした。
暗号資産政策については、米国を世界の暗号資産の中心地にする方針を明確にした。アトキンス委員長は、前政権がデジタル資産を本質的に疑わしいものとして扱ってきたと批判し、今後は米国の法体系の下でイノベーターが再び事業を展開できるよう方向転換を進めると述べた。
投資家が商品を自ら見極められる環境を整える考えも示した。7月4日に提供開始予定の「Trump Account」については、市場参加の裾野を広げる事例として紹介した。約600万人の子どもが登録しており、今後2年以内に生まれる子どもには1000ドルが入金され、雇用主や親、知人が追加で積み立てられると説明した。
同口座は個人退職勘定(IRA)に似た仕組みで、家庭内で市場との接点を持ちにくい子どもにも投資経験の入り口を提供するとの考えを示した。
今回の一連の発言は、米独立記念日と建国250周年を控える時期に出た。SEC幹部はいずれも、開かれた市場、投資家アクセスの拡大、デジタル資産に関する明確な法的枠組みの必要性を強調している。
今後の焦点は、上院でクラリティ法案の審議がどの程度の速さで進むか、そしてSECとCFTCの権限再編が実際の規制執行にどのような変化をもたらすかに移る。