米国で暗号資産ATMへの規制強化が加速している。テネシー州は7月1日から暗号資産ATMとキオスクの設置・利用を全面的に禁止した。ジョージア州も同日、取引上限や警告表示、一部の詐欺被害に対する返金義務を盛り込んだ新たな規制を施行した。
これをCointelegraphが7月1日に報じた。州単位の規制は、暗号資産の現金取引を支えるインフラ全体に広がりつつある。
テネシー州の措置は、ビル・リー知事が4月に署名した法案に基づくもの。州内での暗号資産ATMとキオスクの運営を禁じる内容だ。
ジョージア州は、新規利用者と既存利用者それぞれに送金額の上限を設けた。あわせて、運営事業者には詐欺リスクに関する警告表示を義務付け、一部の詐欺被害では返金対応も求める。
テネシー州では、禁止措置の施行前まで185台の暗号資産ATMとキオスクが稼働していた。これに先立ち、インディアナ州は3月に禁止措置を導入しており、ミネソタ州も8月1日からATM禁止法を施行する予定だ。
規制強化の背景には、暗号資産ATMを悪用した詐欺被害の増加がある。とりわけ高齢者が詐欺犯の指示で端末から資金を送るケースが相次いでおり、複数の州政府や自治体が運営事業者への取締りを強めている。デラウェア州とニュージャージー州の議会でも、端末の全面禁止を柱とする同様の法制化が進められている。
こうした規制強化は、業界の収益構造にも直接的な圧力を及ぼしている。暗号資産ATM運営大手の一角だったBitcoin Depotは5月、米連邦破産法第11章の適用を申請した。同社は申請の数日前、厳しい規制環境と訴訟負担の下では事業継続に自信を持てないと表明していた。
Eco Baseの最高経営責任者(CEO)で再建アドバイザーのロシャン・ダリア氏は、Bitcoin Depotの破綻は今後の業界全体の行方を示す「予告編」になり得ると述べた。従来の事業モデルは、高水準の取引手数料と限定的な規制監視を前提に高コスト構造を維持してきたが、その前提が崩れつつあると指摘した。
ダリア氏は、州政府による消費者保護基準の強化で手数料収入は圧迫され、詐欺関連の活動に対する運営事業者の責任は一段と重くなっていると説明した。取引モニタリングや返金対応への要求水準も高まっており、事業者は現金物流、コンプライアンス費用、詐欺対応、小売流通での収益配分といったコストを抱えるため、規制が厳しくなるほど採算を取りにくくなるという。
この動きは米国外にも広がっている。カナダでは、連邦レベルの政策立案者が全国一律で暗号資産ATMを全面禁止する案を示した。まだ施行前だが、オフラインの両替・送金サービス事業者の店舗を通じたデジタル資産の購入は認める方向とされる。カナダ当局は、暗号資産ATMが詐欺犯による被害者誘導の主要な手段であると同時に、犯罪収益の現金を投入する経路にもなっているとみている。
米国では州ごとに規制の内容こそ異なるものの、方向性はおおむね消費者保護の強化で一致している。暗号資産ATM業界では、端末設置の拡大よりも、規制対応と責任コストをどこまで吸収できるかが、事業継続を左右する重要な論点になっている。