Anthropicは、Salesforce傘下の企業向けコミュニケーション基盤「Slack」で「Claude」を利用できる機能を公開した。Microsoftも、競合サービスの「Microsoft Teams」でClaudeを使える機能を開発している。
これにより、企業向けメッセージングの主要サービスであるSlackとMicrosoft Teamsの双方で、SalesforceやMicrosoftの自社AIだけでなく、Claudeも利用できる方向となった。
MicrosoftとSalesforceはいずれも自社のAIエージェント群を展開しているが、外部AIの利用も認める構図だ。特定のAIを優先するというより、自社製品を軸にしながらも、顧客がClaudeを含む複数のAIエージェントから選べる「アプリストア型」のプラットフォーム戦略を進めている。
AnthropicがSlack向けに公開した「Claudeタグ」は、Slackユーザーがグループチャット内でClaudeを呼び出し、会話内容の確認や各種作業の処理を依頼できるようにする機能だ。
AnthropicはMicrosoft Teamsでも同様の機能を提供する見通しだ。Teams向けのClaudeエージェントは、Microsoftが新たな成長分野として注力するCopilot関連のAIツール群と競合する可能性がある。Teamsはすでに、コーディング支援AIのCursorやAI検索のPerplexityなど、外部企業のさまざまなAIサービスに対応している。
Salesforceも、「Claudeタグ」と競合し得る「Slatbot」を新規事業として育成する一方で、Claudeの参入を受け入れた。ソーシャルメディア上では、ClaudeのSlack対応を後押しするような動きも見られる。
一方で、社内には慎重な見方もある。The Informationによると、Salesforce内部ではClaudeタグについて「競合を自陣営に招き入れた」との懸念も出ているという。Anthropic関係者が昨年、Claudeを使ってSlackに似た業務用チャットアプリを開発していると語ったことや、Anthropicに所属するAI分野の著名人アンドレイ・カルパシー氏が最近、Claudeタグを「AIと人間の関係を変える新たなパラダイム」と評価した点も紹介した。
Salesforceの社外からも、SlackをClaudeに開放した判断に疑問を示す声が上がっている。人事SaaS企業Ripplingのパーカー・コンランドCEOは、「SalesforceがSlackをAnthropicに開放したのは本当に理解しがたい決定だった。明らかにミスに見える」と述べた。
この動きを、Webサイト運営者が自社サイトにFacebookの「いいね」ボタンを設置したケースになぞらえる見方もある。利用者に便利な機能を提供する狙いだった一方で、結果としてFacebookがサイト上のコンテンツに関する大量の情報を把握することにつながった、という指摘だ。
もっとも、MicrosoftやSalesforceが見返りなしにClaudeへ門戸を開いたとは考えにくい。
The Informationは、SalesforceにとってはClaudeタグの統合によってSlackへの関心が高まり、「SlackにはAIエージェントがある」との認知が広がることが、同社の戦略上プラスに働く可能性があると報じた。
実際、4月にSlackアプリ上でコンピューター操作型のAIエージェントを披露したPerplexityは、Claudeタグの発表後、Slackにおける週次のエンタープライズ利用者数が17%増加したとしている。
Microsoftの動きも、プラットフォーム重視の戦略として読み解ける。Microsoftはすでに、顧客がExcel、PowerPoint、Wordといった主力アプリでClaudeを使えるようにしてきた。サティア・ナデラCEOは4月、Claude for Officeが顧客基盤の拡大とMicrosoftのプレゼンス強化に寄与するとの認識を示していた。