AIの利用コストを抑えたい企業を中心に、OpenAIやAnthropicに近い性能をうたう中国発のオープンソースAIモデルへの関心が米テック業界で高まっている。CoinbaseやMicrosoftなどでも、導入や評価の動きが広がっている。
こうした流れを後押ししているのが、中国のAIスタートアップZ.aiが投入した「GLM 5.2」だ。業界では、同モデルの登場を機に中国製オープンソースAIモデルへの注目が一段と強まったとの見方が出ている。
米暗号資産取引所大手のCoinbaseは、LLMゲートウェイでは、Z.aiの「GLM 5.2」やMoonshot AIの「Kimi 2.7」など、中国企業のオープンモデルを既定モデルとして採用するテストを進めている。エンジニアは引き続き、必要に応じて任意のモデルを選択できる。
DatabricksでAIシステムと製品開発を担当するユーチェン・ジン氏は、Xで「GLM-5.2は“オープンソース版Claudeの転換点”だ」と投稿した。そのうえで、「Databricksで確認される需要は驚くほど大きい。世界はオープンソースLLMの大規模採用を目にすることになるだろう」と述べた。
Axiosによると、MicrosoftはCopilotで利用するAnthropicやOpenAIのモデルよりも低コストな代替策として、DeepSeek V4のファインチューニング版や、その他のオープンソースモデルの採用を検討している。
こうした検証は、MicrosoftがOpenAIやAnthropicへの依存を減らし、マルチモデル戦略へ軸足を移しつつあることを示すものとみられる。MicrosoftがDeepSeekを導入した場合、顧客データはMicrosoftのクラウド内に保持され、Azureの企業向けセキュリティ、コンプライアンス、データレジデンシー管理の枠組みが適用される。
中国製AIモデルに対する評価は、単に「安価で実用的」という段階を超えつつある。一部のベンチマークでは、OpenAIやAnthropicを上回る結果も示されている。米政府が安全性を理由にAnthropicやOpenAIの最新AIモデルの提供を制限していることも、中国製AIモデルのシェア拡大を後押ししている。中国のAIモデルの多くはオープンソースで、無償でダウンロードし、改変したうえで用途に応じて活用できる。
シリコンバレーの連続起業家で、MetaとInstagramでプロダクトマネジャーを務めたシャオイン・チュイ氏(Xiaoyin Qu)は、中国製モデルの潜在力は今後さらに高まるとみている。
同氏はXで、米国と欧州の企業はOpenAIやAnthropicを離れ、中国製モデルの採用に向かうと主張し、その理由として4点を挙げた。
第1に、企業が中国製モデルを自社GPU上で稼働させれば、コンプライアンス要件を満たしながらデータの統制権を確保できる点。第2に、自社データを使って追加学習を進めることで、そのデータ自体を競争力へと転換できる点だ。
第3に同氏は、安全性を理由に「Fable 5」モデルへのアクセスが突如遮断された事例を挙げ、Anthropicへの信頼は限定的だと指摘した。Anthropicが顧客データを掌握し、将来的にヘルスケアや法務などの分野で自ら事業展開する可能性も懸念材料だとした。
第4に、企業はAI投資の費用対効果(ROI)を示す圧力を強く受けていると強調した。同氏は「本来の解決策は、信頼できる米国製のオープンソースモデルだが、現時点では存在しない」としたうえで、「すべてのデータとAIの統制権をAnthropicやOpenAIに委ねることが、安全性や規制順守につながると信じるのは甘い」と述べた。
一方、OpenAIとAnthropicは引き続きクローズドモデルを軸に据えている。OpenAIは、中国企業のように重みを公開したオープンモデルも示しているが、重点はなおクローズドモデルにある。Anthropicも、オープンソース戦略にはリスクがあるとして距離を置く姿勢を崩していない。
それでも、中国企業がオープンソースモデルを前面に押し出して台頭していることは、上場を進めるOpenAIとAnthropicにとって厄介な材料となりつつある。対策を講じなければシェアを失う可能性があり、価格で対抗すれば収益性を巡る投資家の圧力が強まる恐れがある。このため両社は、クローズドモデル中心の構造を維持しつつ、コスト効率の改善を急いでいるとみられる。
Anthropicは1日、Opus 4.8に近い性能をより低コストで提供する中型モデル「Sonnet 5」を公開した。The Informationによると、OpenAIもAIモデルの推論コストを半分以下に引き下げる最適化技術を開発したという。