Appleは世界開発者会議(WWDC)で、次世代SiriをはじめとするAI機能を発表した。注目を集めたのはSiriの刷新だが、AppleはSafariやShortcuts、写真アプリ、AirPods、子ども向け保護機能など、日常的に使う機能にもAI活用を広げる。業界では、こうした生活密着型の機能強化こそ、ユーザーが価値を実感しやすいとの見方が出ている。
今回のWWDCでAppleは、新しいSiriを含むOS全体のAI機能を披露した。刷新したSiriは、画面上の内容を理解し、アプリ全体にまたがる個人データを活用しながら、より自然な対話を可能にする設計だ。iPhoneやMacの標準アシスタントとして動作するほか、単体で利用できる形でも提供する。
一方で、今回の発表では大規模なAI機能だけでなく、実際の利用頻度が高い細かな改善にも関心が集まった。TechRadarは29日、WWDCで明らかになったアップデートのうち、体感しやすい5つの機能を取り上げた。
macOS Golden Gateでは、SafariにApple Intelligenceを活用したタブ整理機能「Topics」が加わる。開いているタブをテーマごとに自動で分類し、例えば旅行の準備では航空券、ホテル、観光地に関するページを1つのグループにまとめ、目的地名などをテーマとして提案する。
Shortcutsも使い勝手を見直す。これまではユーザー自身が自動化ルールを組む必要があったが、新バージョンでは実行したい作業を自然言語で入力するだけで、AIがショートカットを自動生成する。画像サイズの変更やPDFからのテキスト抽出、予定の作成といった反復作業を自動化しやすくする。
写真アプリではAI編集機能を強化した。既存の「Clean Up」は、背景が複雑な写真や質感の多い画像でも不要な要素をより自然に除去できるよう改善する。対応範囲も広がり、古い写真やiPhone以外の端末で撮影した写真にも適用できるようにする。
新機能の「Extend」は、写真の縦横比を変えたり背景を広げたりする際、空いた部分をAIが自然に補完する。「Reframe」は、撮影後の写真でも構図を再調整し、カメラアングルを変えたような見せ方を支援する。
AirPodsにはパーソナライズ機能を追加する。AirPods Pro 2、AirPods Pro 3、AirPods 4では、低音、中音、高音をユーザーが個別に調整できるカスタムイコライザーを提供する。用意されたプリセット任せではなく、好みに応じて音を細かく追い込める点が特徴だ。
子ども向け保護機能も拡充する。新たに導入する「Ask to Browse」では、子どもが特定のWebサイトにアクセスする前に、保護者へ許可を求められるようにする。「Ask to Buy」に加え、ゲーム、エンターテインメント、ソーシャルメディアの利用時間を保護者が設定できる機能も追加する。Appleは、子ども向けアカウント管理の手順も簡素化する方針だ。
TechRadarは、今回の機能群について、単にAIを追加するのではなく、実際の使い勝手の向上に軸足を置いたアップデートだと評価した。AppleのAI戦略の中心が新Siriであることに変わりはないが、タブ整理や写真編集、自動化機能のように日常的に使う機能の方が、利用者にとって効果を実感しやすい可能性があると分析している。
業界でも、AppleのAI戦略は大規模な対話型アシスタント競争にとどまらず、整理、編集、自動化といった日常体験の改善へ広がっているとの見方が強い。今後は新Siriの性能だけでなく、こうした生活密着型AI機能が実際のユーザー体験をどこまで変えられるかが焦点となりそうだ。