Omen AIは、AIデータセンター向けに冷却水の状態をリアルタイムで分析する技術を武器に、シリーズAで3100万ドルを調達した。AIインフラの拡大で液体冷却システムの重要性が高まる中、冷却水の異常を早期に検知し、数百万ドル規模に上るダウンタイムの回避につなげる狙いだ。
米ITメディアTechCrunchが6月29日(現地時間)に報じた。調達はNava Venturesが主導し、CRV、Vanderbilt University、MANN+HUMMEL、StarHill Holdings、Hard Yards Capitalなどが参加した。Bridgestone、GM、Johnson Controls、TensorWaveの幹部も個人投資家として出資した。
同社が照準を合わせるのは、AIデータセンターの液体冷却システム運用だ。近年のAIデータセンターでは、GPUの性能を最大限に引き出すため、液体冷却の導入が急速に進んでいる。
運営事業者は冷却効率を高めるため、水を多く含む冷却液を使うことが多い。一方で、こうした環境では細菌が増殖しやすくなる。冷却水が汚染されると、配管や冷却系統の流路が詰まる恐れがあり、復旧にはラック1台を5〜6時間停止して洗浄する必要がある。業界では、この過程で生じる損失が数百万ドル規模に達する可能性があるとみられている。
Omen AIは、超小型分光器を使って冷却水の化学状態をリアルタイムで分析し、こうした課題の解決を目指す。最高経営責任者(CEO)のジャック・ラベラージュ氏は、冷却水内部の化学変化をリアルタイムで把握できなければ、大規模なダウンタイムを受け入れざるを得ないと説明。同社の技術は、細菌増殖を初期段階で検知できるとしている。
同社はもともと、建設機械向けの流体モニタリング事業から出発した。ラベラージュ氏は2020年、14歳で最初の会社を設立し、建設機械向けセンサー事業で約300万ドルを調達した。その後、事業終了を受けて2024年にOmen AIを設立。当初は建設機械内部の流体状態を分析し、整備時期を知らせる技術を開発していた。センサーは細菌に加え、銅やクロムの成分分析によってポンプの摩耗を、シリコン成分からシールの損傷有無を検知できる仕様だという。
データセンター市場への転換のきっかけは、Caterpillarの流通網だった。初期顧客はCaterpillarのディーラーで、同社がデータセンター向け電力供給用のガスタービンや発電機事業も手掛けていることから、新たな需要を見いだしたという。ラベラージュ氏によると、約6カ月前からディーラーが発電設備にセンサーを導入し始め、その後は建物設備への展開に関する問い合わせが相次いだことで、データセンター市場の可能性を確認した。
その後、同社はデータセンター内部が空調システムやチップ冷却装置など多様な流体系統で構成されている点に着目し、これを中核市場として事業を拡大した。現在は約12のデータセンター顧客と協業しており、AMDベースのAIクラウドを運営するTensorWaveも顧客に含まれる。
TensorWaveの社長、ピオトル・トマシク氏は、大規模AIシステムでは流体の状態が重要な変数であるにもかかわらず、業界全体で十分に管理できていないと指摘した。より精密なモニタリングによって、コンピューティングインフラの運用効率向上につながるとの見方を示した。
投資家は技術力に加え、顧客開拓の速さにも注目している。Nava Venturesのパートナー、コリー・レラス氏は、保守的な産業分野で若い創業者が短期間に大口顧客の信頼を得る例は多くないとしたうえで、実際の顧客獲得を通じて技術が素早く検証された点を評価した。Omen AIは2024年の設立以来、今回を含め累計で約4000万ドルを調達している。
もっとも、競争は激しさを増している。現在、多くのデータセンターでは冷却水サンプルを採取して実験室で分析しているが、現場でリアルタイムに分析する市場も急速に広がっている。水質モニタリング企業のPhysisも最近、データセンター冷却水向けの専用モニタリングソリューションを投入した。
Omen AIは、近年の光学センサーと信号処理技術の大幅な進歩によって、こうしたリアルタイム分析が可能になったと説明する。ラベラージュCEOは、ハードウェアコストが大規模導入に耐えうる水準まで下がり、信号処理技術もノイズの中から意味のあるデータを抽出できる段階に達したと述べた。
AIデータセンターの拡大とともに液体冷却システムの導入が進む中、冷却水の状態をリアルタイムで管理する技術は、データセンター運用の新たな競争力として注目を集めそうだ。