Starlinkの衛星インターネットサービス 写真=Teslarati

SpaceXが、米国の個人向けに自社モバイルサービスを立ち上げる可能性が浮上している。米ケーブルテレビ大手のCharter Communicationsと協議を進めており、実現すればVerizon、AT&T、T-Mobileの大手3社と競合する構図になりそうだ。

オンラインメディアのGIGAZINEが29日(現地時間)に報じたところによると、SpaceXとCharter Communicationsは、個人向けモバイル事業の拡大に向けて経営陣レベルで協議した。

協議の中心となったのは、Starlinkを活用したモバイル事業の拡大だ。SpaceXは低軌道衛星通信サービス「Starlink」を展開しており、米携帯通信大手のT-Mobileと連携して、スマートフォンを衛星に直接接続する「Direct to Cell」サービスを提供している。

今回の協議では、通信事業者との提携にとどまらず、SpaceXが自社ブランドで個人向けモバイルサービスを直接運営する案も俎上に載ったという。

事業化されれば、SpaceXは米3大携帯通信事業者と真正面から競合することになる。サービス構築にあたっては、Charter Communicationsの既存通信インフラを活用する案も協議された。全国網をゼロから整備するのではなく、既存設備を使って参入コストと時間を抑える狙いがあるとみられる。

Starlinkのモバイル領域は足元で拡大が続いている。SpaceXは2020年に米国でStarlinkの提供を開始して以降、北米、欧州、オセアニア、アジアへとサービス提供地域を広げてきた。

当初は専用の衛星アンテナが必要だったが、2024年にはスマートフォンと直接通信できる衛星を打ち上げ、提供形態は大きく変わった。その後はT-Mobileとの協業を通じ、一般的なスマートフォンでも衛星に直接接続できるDirect to Cellを商用化している。

海外でも同様の動きは広がっている。日本ではKDDIのauが2025年4月に「au Starlink Direct」を開始し、NTTドコモも2026年4月に「docomo Starlink Direct」の提供を始めた。SoftBankも関連サービスの導入を予告している。

もっとも、SpaceXが海外で携帯通信サービスを直接提供するには、既存のStarlink事業とは別に、各国で携帯通信事業の認可や周波数ライセンスを確保する必要がある。海外展開のハードルは高い。

周波数の確保も課題となる。報道によると、SpaceXは最近、米国の周波数ライセンス競売に参加する資格を取得したほか、シンシナティ地域で約840万ドル、Gulf of America地域で約8万4200ドル相当の周波数権利を確保したという。

ただ、保有周波数はVerizon、AT&T、T-Mobileなど既存の携帯通信事業者に比べて大幅に少ない。独自の全国通信網を構築するには、なお大きな投資負担が伴うとみられる。

このため業界では、今回の動きを直ちに本格参入の準備とみるより、既存事業者との交渉力を高めるための戦略カードと受け止める向きもある。

イーロン・マスク氏も、既存事業者との共存に言及している。マスク氏は昨年の「All-In Summit 2025」で、Starlinkが既存の携帯通信事業者を代替する可能性を問われ、「他の通信事業者ははるかに多くの周波数帯域を保有しており、今後も存続し続ける」と述べたうえで、「Starlinkが他社を廃業に追い込むことはない」と語った。

衛星経由でスマートフォンを直接接続する技術が商用段階に入るなか、SpaceXが提携モデルの拡大にとどまるのか、それとも自社の個人向け通信ブランドを立ち上げて米携帯通信市場に本格参入するのか。今後の動向が注目される。

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