人工知能(AI)向け投資の拡大を背景にメモリ需要が急増し、半導体各社の業績を押し上げている。一方、その影響はAppleやMicrosoftなどの最終製品にも及び、MacやiPad、Xboxでは価格上昇圧力が強まっている。AIインフラ投資が続けば、消費者の負担が長引く可能性がある。
米SiliconANGLEは26日(現地時間)、AIインフラ投資の拡大がメモリ市場を中心に半導体サプライチェーン全体を押し上げていると報じた。こうした動きは半導体メーカーの業績改善にとどまらず、電子機器の価格にも波及し始めているという。
まず恩恵を受けているのはメモリメーカーだ。Micronは直近四半期で市場予想を大きく上回る決算を発表し、26日の株価は約16%上昇した。SiliconANGLEは、AI需要の拡大を受けて同社のAI関連売上高が約4倍に増えたと伝えた。
SK hynixについても、投資拡大に向けた動きが出ている。報道によれば、同社は約296億ドル規模の米国での新規株式公開(IPO)を進めているという。
一方、消費者は製品価格の上昇という形でAIブームの影響を受けている。AppleはMacとiPadを値上げし、MicrosoftもXboxコンソールの価格を引き上げた。SiliconANGLEは、足元のメモリ市況の強さが幅広い電子機器の価格上昇につながっているとし、AppleとMicrosoftの製品を代表例として挙げた。
AI投資の広がりはメモリにとどまらない。AI半導体市場全体でも動きが活発化している。OpenAIは、Broadcomが製造するカスタム推論向けAIチップ「Halapeño」を公開した。Qualcommもデータセンター向けの新たなAIチップ2製品を発表している。
AIチップのスタートアップGroqは、6億5000万ドルの資金を新たに調達した。一方、上場AIチップ企業のCerebrasは、決算発表後に株価が軟調に推移するなど、同じAI半導体分野でも企業ごとの差が鮮明になっている。
製造技術を巡る競争も激しさを増している。IBMは、1ナノメートル未満の半導体技術として世界初をうたう次世代チップアーキテクチャを公開した。同社は、この技術が今後10年の半導体設計の方向性を変える可能性があるとみている。
半導体製造装置大手のApplied Materialsも、AIチップ向け3次元積層パッケージング工程に対応する新装置を披露した。AI演算需要の拡大が、メモリだけでなくパッケージングや製造装置市場の成長も後押ししているとの見方が出ている。
企業向けAI市場も急拡大している。HelloTwinは、企業データを単一の統合情報体系として管理する「Responsible AI Twin」を公開した。AIエージェントの運用や検証を支援するサービスも増えており、SiliconANGLEはこれを「次世代サイバーセキュリティの最前線」と評価した。
AI投資は周辺産業にも広がっている。Googleは映画制作会社A24に7500万ドル(約112億5000万円)を投じ、AIベースのコンテンツ制作を支援する方針だ。Argentum AIは、78億ドル(約1兆1700億円)規模のAIインフラ契約を発表し、市場の注目を集めた。
AI投資の拡大は、メモリやデータセンター向け半導体、製造装置、企業向けソフトウェアまでサプライチェーン全体に新たな成長機会をもたらしている。ただ、半導体業界の好況が続くほど、スマートフォンやPC、ゲーム機などの価格上昇を消費者が長く負担する可能性もある。AIインフラ投資は当面続くとみられ、メモリ需給のひっ迫と価格負担は短期的には解消しにくいとの見方が強い。