画像=Reve AI。サイバーパンクが見通したのは機械そのものではなく、技術の統制を巡る構図だという

脳・コンピューター・インタフェース(BCI)やAIスマートグラス、ロボット義手といった先端技術が現実味を増す中、サイバーパンクが描いてきた未来像を改めて見直す動きが広がっている。注目されているのは身体拡張技術そのものではなく、巨大テックがデジタル空間の主導権を握る権力構造が現実になりつつある点だ。

米ブロックチェーンメディアのDecryptは28日(現地時間)、サイバーパンクが示してきた未来像は、AIとデジタルプラットフォームが社会基盤となった現在、新たな現実味を帯びていると報じた。

サイバーパンクはこれまで、巨大企業、ハッカー、AI、仮想現実(VR)、身体拡張技術が入り交じる未来社会を描いてきた。足元では、イーロン・マスク氏が率いるNeuralinkのようなBCIやAIスマートグラス、高機能なロボット義手が登場し、OpenAI、xAI、Anthropic、Meta、Googleは数十億人規模の働き方やコミュニケーションに影響を及ぼすプラットフォーム企業へと成長している。

初期インターネット文化を代表する人物のケン・ゴフマン氏は、当時はインターネットが政府や大企業に集中した権力を分散させるとの期待が強かったと振り返る。だが現実は逆で、「技術が権力を分散させるどころか、技術を生み出した企業そのものが世界で最も強い組織になった」と指摘した。

ゴフマン氏はまた、当時はディストピア的な想像ですらどこか戯画的に感じられたものの、実際の未来はそれほど劇的ではなく、むしろ日常の延長として訪れたと評した。「終末でさえ映画のような面白さはなく、ひどく退屈で平凡なものだった」という。

インターネット文化の変化にも言及した。かつては「R.U.シリアス」の筆名で活動していたが、Facebookのような実名制プラットフォームの登場を機に、本名を再び使うようになったという。ゴフマン氏はこれを、ネット上の匿名性の時代が終わり始めた瞬間のように感じたと振り返った。

サイバーパンクが最も正確に見通したのは、技術そのものよりも権力のあり方だとする見方もある。ジョージア大学でエンターテインメント・メディア研究を専門とするシラ・チェス氏は、「サイバーパンクの核心はサイバー義手やスマートグラスではない。企業がデジタル空間を掌握する未来を予見した点にある」と語った。

チェス氏は、問題の本質はAIそのものより、AIを巡る統制の仕組みと社会的な言説にあるとみる。社会がAIを特定の形でしか受け入れなくなれば、次の世代が別の可能性を想像しにくくなる恐れがあるという。

インターネット環境がオープン型からクローズド型へ移りつつあるとの指摘もある。インターネット自体は依然として広く開かれている一方、AIサービスやソフトウェアはサブスクリプションモデルや閉鎖的なエコシステムへ組み込まれつつある。

チェス氏は、AIによるコーディング支援の拡大にも懸念を示した。開発者がシステムの仕組みを自ら理解するよりもAIに依存する傾向が強まりかねないためだ。企業に依存しない技術を築くには、最終的にプログラミングやシステム構造を自分で理解する必要があると強調した。

こうした流れへの対抗も始まっている。再利用ハードウェアとオープンソースソフトウェアを使って自作コンピューターを組み上げる「サイバーデッキ」の文化が広がっているほか、オープンソースの開発者やプライバシー活動家も、閉鎖が進むAIエコシステムへの対応を続けている。

一部地域では、AIデータセンターの建設を巡る反発も続く。水使用量や電力消費、環境負荷を理由に、新設計画に反対する地域住民の動きが広がっているという。

暗号資産とブロックチェーンも、サイバーパンク的な価値観と重ねて語られている。Project Spartacusはビットコインネットワークを活用し、ウィキリークスのアフガニスタン戦争記録を恒久的に保存したとされる。2023年には、ビットコインのホワイトペーパーの複製がAppleのmacOS内部に含まれていたことも確認された。コードと分散ネットワークを通じて政府や企業の権力に対抗する発想は、サイバーパンクの世界観と通じると受け止められている。

一方で、テック企業への反発が現実の対立に発展する例も出ている。4月には、サム・アルトマン氏の自宅に火炎瓶を投げ込み、OpenAI本社を脅迫した疑いで容疑者が逮捕されたという。

チェス氏は今後の変化を主導する世代として、Z世代とアルファ世代を挙げた。両世代は成長の過程で接してきた技術を、前の世代よりもはるかに複眼的に捉えていると評価した。

結局のところ、サイバーパンクが残した最も重要な問いは、未来の技術がどのような形を取るかではない。その技術を誰が握り、誰のために使うのかという点にある。AIとプラットフォーム企業が社会全体への影響力を強める今、権力と統制を巡る問題はもはや小説の中の想像ではなく、産業とデジタル空間で現実に向き合うべき課題になっている。

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