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米議会が、連邦準備制度理事会(Fed)による中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行を2030年末まで禁じる法案を可決し、米国の「デジタルドル」を巡る競争は民間主導へと大きく傾いた。今後は、CircleやTetherなどのステーブルコイン発行体と、大手銀行が進めるトークン化預金ネットワークが主戦場になる見通しだ。

ブロックチェーンメディアのCryptoSlateが28日に報じた。今回の措置により、政府主導のデジタルドル導入は当面後退する一方、民間セクターでの主導権争いは一段と加速している。

法案は22日に上院を85対5で通過し、翌23日には下院でも358対32で可決された。条文には、FedによるCBDC発行を禁じる内容が盛り込まれた。

これによりFedは、少なくとも2031年まで小売型のデジタルドルを投入できなくなった。その後に再び推進する場合でも、新たな議会承認が必要になる。

政治面では、すでにCBDCに慎重な空気が強まっていた。ケビン・ウォッシュ氏は指名承認公聴会で、米国のCBDCを「誤った政策」と位置付けた。スコット・ベッセント財務長官も「デジタルドルは議論の俎上から外れた」と発言している。ドナルド・トランプ米大統領も2025年1月の大統領令で反対姿勢を公式に示した。

市場の関心は、禁止措置そのものよりも、その後の競争環境に移っている。Fedはこれまで研究報告書の公表やボストン連銀による小規模な実証を進めてきたが、実用化段階には至っていなかった。

政府発行のデジタルドルが当面は不在となることで、民間市場での覇権争いは一層重要性を増すとの見方が出ている。

まず恩恵を受ける可能性が高いのは、民間ステーブルコイン陣営だ。ステーブルコインは、現金や短期国債などを準備資産とし、1ドルに連動する価格を維持するデジタルトークンを指す。

市場ではCircleのUSDCとTetherのUSDTが主導している。市場規模は約3200億ドル(約48兆円)で、この2銘柄が全体の8割超を占める。昨年整備されたジーニアス法は、発行体に対し、1対1の準備金保有、月次開示、保有者への利払い禁止といった連邦ルールを課した。

仮にCBDCが導入されていれば、民間発行体は中央銀行の信用力とバランスシートを背景に持つ強力な競合と向き合うことになっていた。

ただ、より大きな競争相手として浮上する可能性があるのは銀行だ。JPモルガン、Citigroup、Bank of America、Wells Fargoを含む12超の貸出機関は、銀行が保有する決済会社The Clearing Houseを通じて、共同のトークン化預金ネットワークの構築を進めている。

稼働目標は2027年上期。一部の銀行はこのプロジェクトを「ブリッジ」または「チェーン」と呼んでいる。

トークン化預金は、既存の銀行預金をブロックチェーン台帳上に記録する仕組みだ。資金は引き続き銀行の負債として扱われ、預金保険の対象にとどまる。一方で、ステーブルコインの強みとされてきた即時決済、24時間送金、プログラム可能な決済機能の一部を取り込める点が特徴となる。

ジーニアス法は、デジタル台帳に記録された預金を、決済用ステーブルコインの定義から除外した。連邦預金保険公社(FDIC)も4月、ステーブルコインの準備資産についてはトークン保有者に預金保険がそのまま及ばない一方、トークン化預金は通常の預金保護を維持するとの整理を示した。

銀行が対応を急ぐ背景には、預金が中核的な収益基盤であることがある。資金が当座預金や普通預金、貯蓄預金にとどまれば、それを原資に融資を実行できるためだ。

米銀行業界団体は昨年、規制設計を誤れば最大6兆6000億ドル(約990兆円)が預金システムの外へ流出しかねないと議会に警告した。JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOも、ステーブルコイン基盤が実質的に収益を分配する構造を認めることに強く反対してきた。

政策当局内でも見方は割れている。イングランド銀行のメーガン・グリーン氏は5月末の会議で、トークン化預金が5年以内にステーブルコインに取って代わる可能性が高いとの見解を示した。

同氏は、CBDCを「遅いカメ」、ステーブルコインを「速いウサギ」、そしてトークン化預金を「自分が賭けるサイ」に例えた。一方、クリストファー・ウォラーFed理事は同じ場で、ステーブルコインは危険な存在ではなく、決済分野の競争を促す手段だとして擁護した。

もっとも、銀行ネットワークの成功はなお不透明だ。Bank of Americaの決済部門責任者は、顧客が現時点でトークン化預金を強く求めている状況ではないと認めている。

技術ベンダーも決まっておらず、実際の立ち上げまでにはなお1年以上を要する見込みだ。初期需要も、大企業の資金管理やクロスボーダー決済に集中する公算が大きい。このため当面は、公開型の暗号資産市場でステーブルコインが優位を保つ可能性がある。

今回の法案で明確になったのは、Fedの小売型CBDCが少なくとも2031年まで足止めされるという点だ。その間、米国で実際に使われるデジタルドルの形を巡っては、ステーブルコイン発行体と銀行が競い合う構図となる。勝敗を左右するのは、各陣営がどの程度の利回りを提示できるか、監督の強さがどう定まるか、そして商取引やフィンテック、給与システムをどちらが先に押さえるかだ。

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