ステーブルコインのイメージ(写真=Reve AI)

国際決済銀行(BIS)は、ステーブルコインの拡大が国際通貨システムの分断を招き、各国の通貨主権を損なう恐れがあるとして警鐘を鳴らした。民間デジタルトークンは安定的で信頼できる通貨としての制度要件を欠くとし、中央銀行マネーと商業銀行預金のトークン化を加速すべきだと提言した。

BISは年次経済報告書で、ステーブルコインを将来の通貨システムの中核に据えるのは難しいとの見方を示した。Cointelegraphが28日(現地時間)に報じた。

報告書では、約3160億ドル規模のステーブルコイン市場に言及し、法定通貨に連動するトークンであっても、健全な通貨に求められる条件を満たしていないと指摘した。そのうえで、中央銀行マネーと商業銀行マネーのトークン化を一段と進める必要があるとした。

BISが課題として挙げたのが、準備資産の管理を巡る構造的な脆弱性だ。銀行預金が民間デジタルトークンへ大量にシフトすれば、銀行の資金調達基盤が弱まり、実体経済向けの信用供給が制約される可能性があると分析した。規制強化だけでは、ステーブルコインの拡大ペースに対応しきれない恐れもあるという。

代替案として示したのは、トークン化した商業銀行預金とトークン化した中央銀行マネーを、規制されたインフラ上で併用する仕組みだ。BISは、これが決済の高度化と通貨の安定性確保を両立させる、より堅牢なアプローチになると説明した。

あわせて、米ドル建てステーブルコインが、自国通貨の信認が弱い国で急速に普及している点にも警戒感を示した。いわゆる「ステーブルコインのドル化」は、各国の金融政策の実効性を低下させるほか、銀行の仲介機能を弱め、新興国では国境をまたぐ資本移動の変動にさらされやすくなると警告した。

パーミッションレス型ブロックチェーンに対する批判も盛り込んだ。BISは、BitcoinやEthereumに代表されるこうしたブロックチェーンは、金融システムの基盤にはなりにくいと評価した。分散型の検証と中央管理主体の不在という構造上、大規模な金融インフラに必要なスケーラビリティ、法的責任、決済の最終性を十分に満たしにくいとみている。

さらに、分散型コンセンサスの経済性にも問題があるとした。バリデーター報酬の仕組み上、ネットワーク利用の増加が取引手数料の上昇につながりやすく、混雑や確認遅延、コスト増は一時的な技術課題ではなく、システムに内在する特性に近いと指摘した。こうした特性は、一体的な通貨システムに必要な効率性やネットワーク効果を損なう可能性があるとしている。

また、既存の規制下にある金融システムとの接続にも限界があるとした。システムの完全性維持や紛争解決、金融規制の順守に責任を負う明確な主体がなければ、大規模な規制金融活動を支えるのは難しいという。パーミッションレス型ブロックチェーンが制度金融と結び付く際の課題を、構造面から示した格好だ。

一方で、BISはトークン化そのものを否定しているわけではない。中央銀行マネー、商業銀行預金、金融資産を単一のプログラマブルなプラットフォーム上で扱う「統合台帳」の枠組みを提案した。プログラマブルな取引や迅速な決済といった利点を取り込みつつ、既存の通貨システムを支える制度的基盤は維持する方向性を打ち出した。

BISは、市場の効率化が重要であっても、通貨の安定性や金融システムの健全性、公衆の信認を犠牲にしてはならないと強調した。ステーブルコイン規制を発行体管理にとどめるのか、それともトークン化された銀行マネーを軸に制度設計を進めるのかが、今後の主要な論点になりそうだ。

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