国内でデジタル資産の制度整備を巡る議論が続くなか、金融機関が関連インフラの確保に動いている。銀行、証券、資産運用各社は、デジタル資産取引所への出資や協業にとどまらず、海外のブロックチェーン財団、RWA関連企業、STOプラットフォーム企業との提携も広げている。
業界関係者によると、今月に入り、国内の金融会社やフィンテック企業がデジタル資産インフラの構築に向けた業務提携や出資を相次いで進めていることが28日までに分かった。
Toss BankはSolana Foundationと、ブロックチェーンを基盤とする次世代金融インフラ分野で協力を進める。Mirae Asset Global InvestmentsはOndo Financeと、上場投資信託(ETF)のトークン化エコシステム構築に向けて業務提携を結んだ。KB SecuritiesはCanton Foundation、Wavebridgeとともに、分散型台帳ベースのデジタル資産インフラ構築に向けた協力を始めた。
Korea Investment & SecuritiesはCoinone、OKX、Com2uS Holdingsとのデジタル金融エコシステム構築に向け、連携を強化した。これに先立ち、Korea Investment & SecuritiesとOKX VenturesはCoinoneの持分をそれぞれ約20%取得し、共同で第3位株主となる体制を整えた。
Com2uS HoldingsもCoinoneの主要株主として残り、ブロックチェーン技術とコンテンツのエコシステム面で協力関係を維持する。
資産運用業界では、トークン化が主要テーマとして浮上している。Mirae Asset Global InvestmentsはOndo Financeとの提携を通じ、ETFのトークン化やオンチェーン資産運用インフラの構築、グローバル投資家向けデジタル投資商品の開発を進める。
対象資産は米国上場ETFを起点に、カナダ、欧州、豪州、日本、香港へと広げる方針だ。将来的には商品など他の資産クラスへの拡大も検討する。
証券業界では、STOと分散型台帳インフラの確保を巡る競争が続いている。KB SecuritiesはCanton Networkを活用し、国内資本市場の取引に分散型台帳インフラを適用する方策を検討している。
中長期的には、分散型台帳ベースの金融商品の国内導入に加え、海外流通インフラの構築まで協力範囲を広げる構想だ。
DB Financial Investmentは、Nasdaq上場のK Wave Media(KWM)と、Kコンテンツの知的財産(IP)を基盤とするSTOプラットフォーム「GAON」の構築に向け、戦略的業務提携を締結した。
GAONはKWMが推進するSolanaブロックチェーン基盤のプラットフォームで、KWMが企画、開発、運営を統括する。DB Financial Investmentは、国内外投資家の参加スキームや、資本市場法に沿った投資スキーム設計などを助言する役割を担う。
銀行業界と決済業界は、送金・決済・清算インフラに注目している。Toss BankとSolana Foundationの協力は、インターネット専業銀行がブロックチェーンネットワークを金融インフラに適用できるか検証する事例といえる。
ステーブルコインの制度化が進めば、海外送金や決済に加え、デジタル資産やトークン化資産にも活用範囲が広がる可能性がある。
グローバル市場では、ステーブルコインとRWAがすでに主要なデジタル金融インフラとして位置付けられている。業界によると、ステーブルコインの発行残高は2968億ドル(約44兆5200億円)、RWAの発行額は322億ドル(約4兆8300億円)規模に達する。
ステーブルコインはUSDTとUSDCが中心で、RWAは米国債を軸に拡大している。
もっとも、金融業界のこうした動きは、当面の顧客向け商品投入というより、制度整備後の市場主導権を見据えた先行投資の色彩が強い。デジタル資産基本法、ステーブルコイン規制、トークン証券の発行・流通制度、取引所の大株主適格性審査など、なお整理されていない論点が多いためだ。
制度整備が遅れる間にも、海外インフラ企業の影響力は強まっている。グローバル取引所ではすでに国内指数や国内株に連動する商品が取引されている一方、国内の金融機関や取引所は制度面の制約から関連事業を直接手掛けにくいという。
国内資産に対する海外需要が増えても、その恩恵が海外取引所やインフラ企業に集中しかねないとの指摘が出ている背景には、こうした事情がある。
金融投資業界の関係者は「デジタル資産市場の競争軸は、取引所中心から、金融グループ、運用会社、決済会社、グローバルインフラ企業が絡むエコシステム競争へと移っている」と指摘する。その上で「制度化後は、単に取引を支援するだけでなく、発行、流通、保管、決済、運用の各インフラをどこまで押さえたかが競争力を左右する」との見方を示した。