元Googleエンジニアのパトリック・シュ氏は、保有していた暗号資産をすべて売却したと明らかにした。売却に伴い大きな損失を出したという。背景として、市場流動性の低下や、マイナー報酬の減少に伴うビットコインネットワークの安全性への懸念を挙げた。
ブロックチェーンメディアのU.Todayが25日(現地時間)に報じた。シュ氏は最近公開したYouTube動画で、ビットコインを含む暗号資産の保有分を手じまいし、その過程で大幅な損失を被ったと説明した。
シュ氏は、GoogleでYouTubeアプリのアーキテクチャを担当し、その後はMetaでスタッフ・ソフトウェアエンジニアを務めた経歴を持つ。今回の動画では、足元の暗号資産市場の下落が想定を大きく上回るスピードで進んだとの認識を示した。
ビットコインが最近、6万ドル(約900万円)を下回る場面があり、市場心理が急速に冷え込む中で、自身の判断ミスについても認めた。
動画の中でシュ氏は、自身のビットコインをすべて売却し、財務的に非常に大きな損失を出したと語った。こうした判断を1年前の自分は想像もしなかったとして、今回の下落は不意を突かれたとも述べた。
損失拡大の要因としては、レバレッジの利用を挙げた。ビットコインが昨年10月の12万ドル(約1800万円)水準から、今年の夏には6万ドル(約900万円)台前半まで下落したとして、相場が約半値になったとの見方を示した。
その上で、過度なレバレッジによって小さな判断ミスが深刻な結果につながったと振り返った。
シュ氏の懸念は、価格下落そのものにとどまらない。現在の市場は2021年当時に比べて流動性が大きく低下しており、多くの投資家が同時に売却へ動いた場合、それを吸収する買い手が不足する可能性があると指摘した。
市場環境については「薄い氷の上を歩いているようなものだ」と表現した。今後売り手に回り得る保有者はなお多いとして、Mt. Goxの債権者に3万5000BTCが戻る点や、MicroStrategyが85万BTCを保有している点に言及した。
これらの主体が市場で売却に動けば、個人投資家が買い手としてその受け皿になりかねないとも主張した。市場全体が一斉に換金へ向かった場合、全員が退出できるだけの十分な流動性はない可能性があるとの見方を示した。
売却の背景には、ビットコインネットワークの構造的な問題もあるという。シュ氏は、マイナー報酬が減少していく局面で、ネットワークの安全性を長期的に維持できるのか疑問を呈した。
マイナーは新規発行されるコインと取引手数料を収入源としているが、すでにビットコインの95%が発行済みである以上、今後は手数料収入の重要性が一段と高まるとの見方だ。
一方でシュ氏は、マイナーが依存すべき手数料収入の基盤はまだ十分に形成されていないと指摘した。手数料収入が細ればマイナーが設備を停止し、結果としてネットワークの安全性が低下し、より脆弱になる可能性があるとした。
さらに、量子コンピューティングが長期的な脅威になり得る点にも触れた。マイナー報酬の縮小と、セキュリティ維持コストの問題をあわせて提起した格好だ。
もっとも、シュ氏はビットコインそのものを全面的に否定したわけではない。保有資産はすべて整理した一方で、基盤技術については長期的に前向きな見方を維持していると述べた。
その上で、自身は依然として長期では強気だと説明した。ビットコインは相場サイクルのたびに再び注目を集めてきたとし、市場で「ビットコインは終わった」との見方が広がる局面こそ、むしろ底打ちのシグナルになり得るとの考えを示した。