ミームコインの販促が、ネット上の話題作りの域を超え、現実世界で身体的リスクを伴う行為にまで広がっている。専門家の間では、注目獲得競争が過熱するなか、プラットフォームの責任や規制の必要性を問う声が強まっている。
Cointelegraphが6月24日(現地時間)に報じたところによると、Solana基盤のトークン発行プラットフォーム「Pump.fun」は、暗号資産を報酬として支払うプロモーション施策を展開する過程で、剃髪や過度の飲酒、タトゥーといった危険な行為まで販促手段として利用したとして批判を受けている。
背景には、ミームコイン特有の価値形成のあり方がある。一般的なブロックチェーン関連プロジェクトが、技術や決済機能、インフラ、分散型アプリケーション(DApp)といった実用面を訴求するのに対し、ミームコインはインターネット文化や話題性、コミュニティの関心を土台に価値が形成されることが多い。Cointelegraphは、「ミームコインの価値は、どれだけ多くの人に見られ、共有され、話題にされるかに左右される」と説明した。
Pump.funは、こうした傾向をさらに強めた。誰でも低コストで短時間に新たなトークンを発行できるようになったことで新規トークンの供給が急増し、技術力よりも「いかに目立つか」が競争力になりやすい環境が生まれたためだ。
特に、報酬型マーケットプレイス「GO」では、利用者が他者に特定の販促活動を依頼し、その対価として暗号資産を支払える仕組みを提供していた。一部では、こうした依頼が身体を使った極端なパフォーマンスにつながったとの指摘も出ている。
実例も報じられている。インドのタミル・ナードゥ州に住む利用者が、報酬を得るため、自身の額に「$boutywork」というトークンのティッカーをタトゥーで刻んだという。Cointelegraphはこの事例について、「一時的なネット上の流行を宣伝する行為が、消えない形で身体に残った」と評した。一方で、このトークンへの関心は長続きせず、市場の注目はすぐに別のミームコインへ移ったとしている。
業界では、こうした仕組みがより刺激の強い行動をあおるとの懸念が出ている。過激なパフォーマンスほど閲覧数や関心を集めやすく、それがトークンの取引増加や価格上昇につながる循環が生まれているためだ。炎上や論争そのものが、プロモーションとして機能する現象も起きている。
一方で、参加者を一律に非難すべきではないとの見方もある。金銭や注目を得るために当人が自発的に行動を選ぶ点では、従来のネット上のチャレンジ企画やインフルエンサーマーケティングと大きく変わらない、という主張だ。
ただ、批判的な立場からは、経済的に厳しい立場の参加者ほど短期的な報酬に引き寄せられ、長期的なリスクを過小評価する恐れがあるとの指摘がある。プラットフォーム側も、刺激の強いコンテンツによって膨らんだ取引量の恩恵を間接的に受けているとみられている。
Pump.funを巡る論争は今回が初めてではない。ライブ配信機能を提供していた当時には、投資家の関心を引くため、性的に露骨なコンテンツや脅迫的な行為、過度なパフォーマンスを配信する利用者が現れ、問題化した。同社はその後、この機能を一時停止し、管理機能を強化したうえでサービスを再開した。
こうした事例は、規制の空白という問題も浮き彫りにしている。専門家は、暗号資産を報酬とする販促プログラムが、単なるマーケティングなのか、危険を伴う労働に当たるのか、あるいは投資を促す勧誘行為なのか、法的な性格が明確ではないと指摘する。
そのため、消費者保護当局は参加者に危険性が十分に告知されていたか、労働当局は経済的弱者の保護が必要か、金融規制当局はトークン報酬が投資勧誘に該当するかどうかを、それぞれ検討する可能性があるとの見方が出ている。
業界では今後、プラットフォームが危険な販促タスクをどこまで制限するのか、利用者がどこまでを許容可能なマーケティングと受け止めるのかが、ミームコイン市場の新たな課題になるとみられている。