ステーブルコインを巡る議論は、単純な賛否から規制設計や制度的な受け入れ条件へと移りつつある。写真=Shutterstock

国際決済銀行(BIS)の前総支配人であるアグスティン・カールステンス氏が、ステーブルコインについて従来より踏み込んだ見解を示した。法定通貨との共存は可能との認識を示す一方で、その前提として国際的に整合した規制枠組みが欠かせないと強調した。

Cointelegraphが23日(現地時間)に報じたところによると、カールステンス氏はPoint Zero Forumの歓迎演説で、ステーブルコインが金融イノベーションの促進や金融包摂の拡大、コスト削減に寄与し得ると評価した。

同氏は、グローバルな金融・技術ネットワークの国際諮問委員として、「ステーブルコインが金融イノベーションや包摂を後押しし、コスト低下にどのように貢献できるかを認識するようになった」と述べたうえで、「法定通貨とステーブルコインが共存できる条件を整える必要がある」と語った。

この発言は、BIS在任中に示していた厳しい見方と比べると変化がうかがえる。カールステンス氏は2022年の演説で、ステーブルコインが健全な通貨の役割を担うのは難しいとの認識を示していた。

当時は、発行体が収益拡大を優先するあまり、準備資産の運用で過大なリスクを取る誘因があると警告していた。さらに、2025年のBIS総支配人退任を前にした演説でも、ステーブルコインは流動性リスクを高める可能性があるうえ、社会で広く受け入れられる通貨に必要な中核的要件を満たしていないと批判していた。

もっとも、BIS全体のスタンスが変わったわけではないとの見方も強い。後任のパブロ・エルナンデス・デ・コスBIS総支配人は4月、ステーブルコイン市場は依然として規模が限定的で、構造的にも通貨機能の発揮に制約があると評価した。

BISも23日に公表した2026年次経済報告書の事前資料で、現在のステーブルコインの仕組みは、通貨に必要な中核的な信認要件を十分に満たしていないと指摘した。広範に普及した場合には、金融安定や銀行の資金調達構造、各国の通貨主権に負担を及ぼす恐れがあると警告している。

一方、市場の関心は、ステーブルコインの是非そのものよりも、どのような規制の下で既存の金融システムに組み込むかへと移っている。カールステンス氏は、伝統的な金融システムがステーブルコインや分散型台帳技術(DLT)、トークン化の利点を積極的に活用できると評価した。

そのうえで、発行体に対する信頼を高めるには、国際的に調整された規制枠組みが必要だと強調した。発行体規制を強化し、公平な競争環境を整えれば、ステーブルコイン産業は大きく成長し得るとの見通しも示した。

BISは、ステーブルコイン自体には警戒姿勢を維持しつつも、トークン化技術の活用には比較的前向きな見方を示している。資産をデジタル形式で表現するトークン化を既存の金融システムに組み込めば、通貨への信認を維持しながら、プログラマブル・ファイナンスなど新たなサービスの実装が可能になるとしている。

主要地域では、すでに個別の規制整備が進んでいる。米国では2025年7月に制定されたジニアス法が、決済用ステーブルコインに関する初の連邦レベルの規制枠組みを整備した。

同法では、現金や短期米国債など高流動性資産による100%の準備保有を義務付けている。欧州連合(EU)でも、暗号資産市場規制法(MiCA)に基づき、ステーブルコイン発行体への規制が導入されている。

主な要件は、発行認可の取得、承認済みホワイトペーパーの公表、全額準備の維持、準備資産と自社資金の分別管理だ。

こうした状況を踏まえると、カールステンス氏の発言は、ステーブルコインを巡る議論が単純な賛否を超え、規制を前提とした共存モデルの模索へ移っていることを示している。ただ、BIS内部ではなお、通貨機能や金融安定への懸念が残る。今後の焦点は、既存の通貨システムとどのような条件で接続させるかに移りそうだ。

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