Snapdragon 8 Elite(第6世代)とSnapdragon 8 Elite Extreme(第6世代) 写真=Qualcomm

【マウイ(米ハワイ州)】Qualcommは、フラッグシップ向けモバイルプラットフォーム「Snapdragon 8」を今世代から2製品体制に切り替える。スマートフォンメーカー(OEM)が標準モデルやPro、Ultraといった各機種で必要な機能を選び分け、製品ポートフォリオ全体の原価を最適化しやすくする狙いだ。8K/60fps動画撮影やAPVコーデックなどは、上位の「Snapdragon 8 Elite Extreme(第6世代)」に限定する。

Qualcommは、機能を1つの最上位プラットフォームに集約する従来型ではなく、用途や価格帯に応じて選択できる構成に改めた。8K撮影のようにコスト負担の大きい機能を最上位機向けに絞ることで、OEMは下位モデルで不要な機能を省きやすくなる。

クリス・パトリック氏(Qualcomm上席副社長兼モバイル・ハンドセット本部長)は22日(現地時間)、米ハワイ州マウイで開かれた「Snapdragon Summit 2026」のモバイルQ&Aセッションで、「8K/60fpsが不要な端末にまでその機能を載せる必要はない。メーカーは製品群全体の平均コストを引き下げられる。そこが今回の狙いだ」と説明した。1つのプラットフォームに全機能を載せれば、下位モデルでも使わない機能のコストまで抱え込むことになるという。

同氏は、メーカーが標準モデル、Pro、Ultraの3モデルを展開するケースを例に挙げた。3モデルすべてで同一のカメラセンサーを採用するとは限らず、最上位モデルに高性能カメラを搭載し、下位モデルは仕様を抑えて価格帯を分ける構成が一般的だとする。カメラ性能を最優先しない消費者は標準モデルを選べるため、メーカーは価格と機能の異なる選択肢を用意できるというわけだ。

パトリック氏は、「Elite」と「Extreme」はダイの規模も異なる別製品だとしつつ、「同じ製品群であり、同じDNAを持つ」と説明した。ダイは回路を形成したチップ本体を指す。2製品はQualcomm OryonのCPU設計(IP)を共通化する一方、GPUはベース設計こそ近いものの拡張機能が異なる。このほか、Adreno向け高性能メモリ(HPM)の容量やマトリクスアクセラレータ、画像信号処理(ISP)にも差を設けた。

8K/60fps動画撮影などはExtremeに限定

ジュード・ヒープ氏(Qualcommプロダクト管理担当副社長)によると、8K/60fpsと4K/240fpsの動画撮影、APVコーデック、VVCデコーダーは「Snapdragon 8 Elite Extreme(第6世代)」のみに搭載する。パトリック氏は「狙いは、8 Elite(第6世代)でも真のフラッグシップ体験を提供することだ」としたうえで、「ゲームで1フレームの差まで求める場合や、スマートフォンで誰も成し得なかった水準の専門的なコンテンツ制作を望むなら、Extremeに投資すればよい」と述べた。

放熱設計に関わるパッケージも、2製品で異なる。Qualcommはこれまで8シリーズで、チップ上にメモリを積層するパッケージ・オン・パッケージ(PoP)方式を採用してきた。今回の「Snapdragon 8 Elite Extreme(第6世代)」では、メモリをチップ上に載せつつ位置を横方向にずらしたオフセットパッケージを採用した。配置を見直すことで、ダイの熱管理方式を変更したとしている。

パトリック氏は「高解像度・高フレームレートのゲームを動作させる場合でも、ダイの熱を逃がしやすくし、性能をより長く維持できる」と述べた。一方、「Snapdragon 8 Elite(第6世代)」は従来のPoPパッケージを採用する。メモリ価格上昇の影響については、これまでと同様のメモリソリューションを使うため、メモリのコスト構造に大きな変化はないと説明した。

AI性能の差は、スマートフォン上で複数の処理を同時に走らせる場面で表れやすいという。ビネシュ・スークマル氏(Qualcommプロダクト管理担当副社長)は、「次の夏休みの計画を送って」といった単一の指示でも、実際には複数の作業が組み合わさる複合命令が増えていると指摘した。こうした処理では、並列実行能力が重要になるという。

「Snapdragon 8 Elite Extreme(第6世代)」は、並列処理を担うスカラー・ベクタースレッド数を多く備える。スークマル氏は、要求から完了まで1秒を目標とする処理を例に挙げ、「8 Elite(第6世代)では2割ほど長い1.2秒程度になる可能性がある」と説明した。一方で、写真の顔のしわを消すといった単一処理では、両者の差はないとも述べた。NPUとISPが連携するAIカメラ機能は、2製品とも同一仕様で搭載する。

OEM側の採用方針は、すでに分かれ始めている。パトリック氏によると、Motorolaは「8 Elite Extreme(第6世代)」搭載機を発表済みで、Xiaomiはグレードに応じて2つのプラットフォームを使い分けている。一方、フォームファクターなど別の価値を前面に打ち出す一部メーカーは、「8 Elite(第6世代)」のみを採用するという。

今世代でどちらが主流になるかとの質問に対し、パトリック氏は「物語はまだ書かれていない」と述べ、現時点でメーカーの判断を見通すのは難しいとの認識を示した。あわせて、コストに敏感なメーカー向けには、昨年投入した「Snapdragon 8 Elite(第5世代)」も継続供給する方針を明らかにした。

同氏は「新しいトランジスタやコーデックを入れれば、その分コストは上がる。前世代品も併売すれば、メーカーが選べる選択肢をより細かくできる」と述べた。Qualcommは、今世代の2製品体制に前世代品の継続供給を組み合わせることで、OEMの価格戦略や製品構成の自由度を高めたい考えだ。

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