写真=Qualcommのビネシュ・スクマール製品管理担当副社長

【米マウイ】Qualcommは、エージェンティックAIの実用化には半導体性能の向上だけでは足りず、ユーザーを継続的に理解して行動につなげる「デジタルツイン」が必要になるとの考えを示した。マウイで開いた「Snapdragon Summit」では、パートナー企業のデモを通じて、記憶・判断・行動の各機能をオンデバイスAIでどう実装するかを披露した。

同社は24日(現地時間)、「Snapdragon Summit」の「Elite Experience」セッションを開催した。冒頭で、マルチメディア製品管理担当副社長のジャド・ヘイプ氏は「Snapdragon技術とエージェンティックAIを新たな形で活用する体験を示す場だ」と説明した。

ヘイプ氏はデモに先立ち、動画撮影の機会が多いか、撮影後の選別や分類、編集作業を煩雑に感じていないかを来場者に問いかけた。多くの参加者がうなずくと、「今回のデモでは、そうした作業をどう簡単にできるかを見せたい」と述べた。

続いて登壇した製品管理担当副社長のビネシュ・スクマール氏は、「大規模モデルによってエージェンティックAIの能力は高まっているが、それだけでパーソナライズが実現するわけではない」と指摘した。そのうえで、「パーソナライズには文脈が必要だ」として、デモの狙いを説明した。

Qualcommが示した中核概念が、ユーザーの「デジタルツイン」だ。単にユーザーを記憶して理解するだけでなく、本人に代わって意味のある行動まで実行してこそ、エージェンティックAIが成立するという考え方だ。生活パターンや嗜好、仕事、よく訪れる場所といった情報を基に、端末内に個人のナレッジグラフを構築することで実現できるとした。スクマール氏は「パーソナライズには、AIがユーザーを模倣できること、すなわちユーザーのデジタルツインを持つことが必要だ」と語った。

同社によれば、オンデバイスAIが人に近いデジタルツインへ近づくには、「記憶」「判断」「行動」の各機能を実サービスとして備える必要がある。今回のデモでは、その役割をパートナー企業が担った。

「記憶」を担当したのはmemories.aiだ。memories.aiの最高経営責任者(CEO)、ショーン・シェン氏は、スマートグラスやノートPCが記録した日常の情報をスマートフォンに集約し、端末内でインデックス化するサービスを披露した。ハワイ到着後、レンタカーの受け取り場所やホテルの場所を尋ねると、エージェントがノートPC上の予約画面を記憶しており、即座に答える場面を示した。蓄積した記憶は時系列で確認できるほか、人物や企業の関係図としても表示でき、不要な記憶はすぐに削除できるという。シェン氏は「処理はすべて端末内で完結し、データが端末外に出ることはない」と説明した。

「判断」はLiquid AIが担った。Liquid AIの最高執行責任者(COO)、ジェフリー・リー氏は、海辺を走った後に膝を痛めたケースを例に挙げた。スマートウォッチが走行速度の低下と左右の歩行の非対称を検知し、Qualcommのセンシングハブ上で動作するPersonal Scribeが、通話中に膝の痛みに触れた内容を記録する。エージェントはこうした複数の信号を関連付け、翌日の運動予定を取り消すよう先回りして提案し、一緒に運動する友人に送るメッセージ案まで作成した。

「行動」はAGIがデモした。AGIのCEO、ディブ・ガルグ氏は、朝の会話に出てきた飲食店名を探し、メッセンジャーのグループチャットに送るよう音声で指示した。するとエージェントは、Personal Scribeの記録から店名を特定し、WhatsAppを開いてメッセージを送信した。このほか、スマートグラスで見たヘッドフォンをAmazonで検索して注文する操作や、機内モードの状態で自撮り写真を撮影し、SMSで送信するデモも披露した。

スクマール氏の発表は約33分で、このうち約20分をデモに充てた。QualcommはAIの訴求軸をチップ性能そのものだけでなく、パートナーと連携した実用サービスへ広げる姿勢を鮮明にしている。スクマール氏は最後に、「Qualcommはこの取り組みを単独では進めない」と述べた。

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