【米マウイ】Qualcommは「Snapdragon Summit 2026」で、ゲーム描画向けAI技術「Adreno Neural Fusion(ANF)」の実測結果を公開した。新ベンチマーク「Traverse Evolve」でネイティブ描画と比較したところ、平均フレームレートは17.7fpsから49.2fpsに向上。同一フレームレート条件での消費電力は、ネイティブモードの6.2Wに対し、ANF Upscaleモードでは1.1Wだった。
デモには、「Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6」を搭載したQualcomm Reference Design(QRD)端末を使用した。Traverse Evolveは、Neural Fusionの効果を示すために新たに開発したベンチマークだという。
テストでは、同一のゲームシーンをANF非使用のネイティブモードとANFモードで交互に実行し、フレームレートと消費電力を比較した。電力は、フレームレートを毎秒10フレームに固定した条件で測定した。
Traverse Evolveの実行結果では、ネイティブモードの平均フレームレートは17.7fpsだった。一方、ANF Upscaleモードでは49.2fpsまで上昇した。いずれの数値も、Qualcommが事前に示していたガイド値をやや下回った。
Neural Fusionは、低解像度で描画した映像をAIで高解像化するスーパーリゾリューションと、2枚のフレームの間にAIが中間フレームを生成するフレーム生成を組み合わせた技術だ。これにより、GPUが全フレームをフルレンダリングしなくて済むとしている。
Qualcommは、従来のモバイルゲームでは画質、フレームレート、バッテリー駆動時間のいずれかを犠牲にしやすかったが、Neural Fusionはこうしたトレードオフの緩和を狙う設計だと説明した。従来のモバイル向けアップスケーリングで起きやすかった微細ディテールのちらつきや、高速移動する物体の残像も抑えられるとしている。フレームレートの向上により、戦闘シーンのような動きの激しい場面でもカクつきの低減が期待できるという。
◆Qualcomm、マトリクス加速をGPUにも拡張
消費電力の比較は、同一フレームレート条件でどれだけ電力を要するかを測る方式で行った。Qualcommは、自動車の燃費比較に近い考え方だと説明する。平均6.2Wだったネイティブモードに対し、ANF Upscaleモードは1.1Wにとどまった。こちらも両数値ともに、同社の想定値をわずかに上回った。
消費電力が低ければ、同じバッテリー容量でもより長時間のゲームプレイが可能になる。Qualcommは「Neural Fusionの目標は、ゲームのグラフィックス品質を高め、より高速に動作させながら、消費電力を抑えることだ」としている。
ベンチマークアプリ上で示された消費電力削減率は82.5%で、Qualcommが提示していた81%に近い水準だった。同社は削減要因として、AI演算とデータ処理をチップ内で完結させるアーキテクチャを挙げた。
この中核となるのが「Adreno Matrix Core」だ。グラフィックス処理の途中でAIモデルを直接実行できる、AI向けのGPUコアとして位置付ける。また、「Adreno High Performance Memory(HPM)」は中間計算結果をチップ内に保持し、システムメモリとの往復を減らす役割を担う。
Qualcommは、AI処理のためにグラフィックスパイプラインの外へデータを移動させる必要がなくなると説明する。関係者は「データ転送回数が減れば、遅延は下がり、効率は高まり、より長いゲーミングセッションにつながる」と述べた。その一方で、「ベンチマークは改良点を示すための一つの手段にすぎず、最終的に重要なのは実際の利用環境だ」とも強調した。
同社は、Adreno Matrix Coreの導入によって、これまでNPUとCPUで進めてきたマトリクス加速をGPUにも拡張したと説明する。これを起点に、AI処理の実装そのものがプラットフォームの基本性能へと組み込まれていくとの見方を示した。
現時点で、Adreno Neural Fusionへの対応を予定するゲームタイトルは18本。Neural FusionはすでにUnityとUnreal Engineに統合されており、ゲームスタジオは個別に機能を開発せずに適用できるという。開発ドキュメントとプラグインも提供中だ。Qualcommは、主要ゲームエンジンがサポートするモバイル向けAIスーパーリゾリューション技術として初だと強調している。