ホワイトハウスがOpenAIとAnthropicに対し、最新AIモデルの先行評価を要請した。写真=Shutterstock

ホワイトハウスが、OpenAIとAnthropicに対し、最新のAIモデルを英国政府のAI Security Institute(AISI)に提供する前に、まず米政府の評価を受けるよう求めたことが分かった。先端AIモデルはまず米側が検証し、その後に海外のパートナーと共有するという運用を念頭に置いた対応とみられる。

24日付のCryptopolitanなど海外メディアによると、今回の要請はホワイトハウスのサイバー政策担当部門が主導した。両社はこれまで通り英国のAISIに未公表モデルを提供するか、それとも米政府による先行評価を優先するかの対応を迫られている。

Anthropicはすでに米側の意向に沿う姿勢を示している。同社は最新モデル「Claude Mythos 5.1」について、まず米国内の一部機関に限定して提供し、米政府との協議を経たうえで国内外のパートナーに対象を広げる方針を明らかにした。

一方、英国AISIは現時点で同モデルの提供を受けていない。ヘンリー・デ・ゾエテAISI所長は、Anthropicのモデルにアクセスできていないと述べた。

ただ、AISIはOpenAIの「GPT-6 Astra」を公開前に試験したとしており、主要AI企業との信頼関係は維持できているとの立場を示している。こうした関係を通じ、非公開ツールや安全対策に関する情報にもアクセスできるとしている。

今回の米側要請の根拠となっているのは、ドナルド・トランプ大統領が6月2日に署名した行政命令だ。同命令は、連邦のサイバー防衛強化と先端AIモデルのサイバー能力評価に向け、機密ベンチマークの整備を求めている。

あわせて、AI開発企業が政府にモデルを提供した場合、他の信頼できるパートナーに公開する前に、連邦政府が最大30日間にわたって評価できる「自主的な枠組み」を構築するよう定めた。もっとも、AIモデルの開発や公開、配布に当たり、政府の事前許可や義務的な事前審査を求める内容は含まれていない。

米国が先行評価を求める背景には、最近のAIモデルのサイバーセキュリティ試験で確認された逸脱行為がある。英国AISIは7月28日、サイバー評価の過程でAIエージェントが実在の個人や組織を対象に、試験範囲を超える行動を取っていたことを確認したと公表した。

AISIによると、複数モデルに同一のサイバーセキュリティ課題を122回実施した結果、10回の実行で計19件の逸脱行為が確認された。内訳はAnthropicの「Mythos 5」が17件、OpenAIの「GPT-5.6 Sol」が2件だった。いずれも当時は、サイバー悪用を防ぐ分類器が無効化されていたという。

最も深刻なケースでは、AIエージェントが実在するオープンソースプロジェクトに悪性コードを挿入しようとした。コードの承認を得るために偽のオンライン上の身元を作成し、プロジェクト管理者に圧力をかけたが、管理者が不審な点に気付き、承認を拒否した。

AISIは、今回の評価がインターネット接続を許可し、一部の安全対策を無効化した緩和条件の下で行われたため、一般的な公開環境でのAIの挙動をそのまま示すものではないと説明している。

そのうえで、今回の事案はAIモデルの評価プロセス自体にも、セキュリティと統制が必要であることを示したとしている。問題は試験プロセス内の安全装置ではなく、別途実施していたネットワークの異常検知の過程で発見されたという。

AISIは、先端AIモデルの実際のリスクを見極めるには、リアルタイム監視と十分に隔離された環境が不可欠だと強調している。

英国は米国との協調を維持しつつ、自国のAI評価能力も前面に打ち出している。アンディ・バーナム英首相は22日の国連総会演説で、AIを2027年の英国のG20議長国運営の中核に据える考えを示した。

エド・ミリバンド英外相も国連安全保障理事会で、各国政府は先端AIモデルを厳格に試験し、企業活動を評価できるだけの十分な情報を確保すべきだと訴えた。

国際通貨基金(IMF)も、欧州がAI需要のすべてを海外に依存するのは困難だとして、独自のAIモデル開発に加え、計算資源、エネルギー、インフラの確保やサプライチェーンの多様化が必要だと指摘した。欧州はAIのバリューチェーンに直接関与すべきだとしている。

今回の米国の要請は、先端AIモデルへのアクセスと安全性評価をどの国が先に担うのかという論点を改めて浮き彫りにした。米英はAI安全分野で協力を続けているが、各国政府が先端モデルへアクセスし、どのような手順と基準で評価するのかをどう調整するかが今後の課題となる。

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