Teslaが「無監督」のフルセルフドライビング(FSD)を想起させる発信を強めるなか、米政界で安全性の検証を求める声が広がっている。米国ではFSDはあくまで運転支援システムとされ、使用中も運転者による常時の監視が前提だ。こうした中で、イーロン・マスクCEOの発信やFSDソフトの警告表示、関連動画の拡散が、規制当局や消費者の誤認を招きかねないとの懸念を呼んでいる。
米EVメディアのCleanTechnicaによると、Teslaは米国を含む主要市場で無監督FSDの展開拡大を目指している。ただ、米国で現行のFSDは自動運転ではなく運転支援として扱われており、運転者による継続的な監視が必要とされる。
ラジャ・クリシュナムルティ米下院議員は10日付の資料で、TeslaのオートパイロットとFSDについて「積極的な運転者の監視を必要とするものであり、自動運転システムではない」と強調した。
TeslaのFSDを巡っては、安全性に関する調査も強まっている。クリシュナムルティ議員は、先行するオートパイロット調査で当局が、Teslaのシステムは運転者の注意力維持や適切な使用を十分に担保できていないと判断したと指摘した。
クリシュナムルティ議員側によれば、車両に対するシステムの制御権限が大きい一方で、運転者の注意を維持させる安全対策はそれに見合う形で整っていないという。
ソーシャルメディア上の動画も、議論に拍車をかけた。NBC Newsが今年確認した17件の動画では、運転者が眠っている、あるいはFSDを適切に監視していない様子が映っていた。複数年にわたって確認された関連動画は計43件に上る。
マスク氏は9日、X(旧Twitter)で98歳のTeslaドライバーの動画を共有した。動画内でこのドライバーは、交差点を通過する際にFSDをもはや監視していないと述べている。
TeslaがFSD利用時の運転者監視を求めているにもかかわらず、マスク氏がこの動画を無監督FSDを想起させる形で拡散したことが、さらに議論を呼ぶ格好となった。
FSDソフトの警告表示も問題視されている。Wiredは、FSDソフトウェア「2025.32.3」の更新に「眠気が検知されました。FSDを使用しながら注意を維持してください」「車線逸脱が検知されました。注意力を保つためFSDの支援を受けてください」といったメッセージが含まれていたと報じた。
クリシュナムルティ議員は、運転者の眠気が検知されているにもかかわらずFSDの使用継続を促すのは、安全面で矛盾があると指摘する。議員は9日、ショーン・ダフィー米運輸長官宛ての書簡で、「FSDは継続的な人間の監視を必要とするが、このメッセージは、車両が運転者の監視能力の低下を検知したまさにその時点で、システムの使用を促しているように見える」と述べた。
課題は米国市場にとどまらない。Teslaは主要な海外市場でもFSDの拡大を進めているが、中国では車載FSDセンサーを巡り、国家安全保障上の懸念が指摘されてきた。FSDがカメラへの依存度が高い構成である点も、安全性を巡る論争の対象となっている。
ロボタクシー事業でも、新たな問題が浮上している。Teslaのアクセサリー企業Baseunerは10日、Teslaのロボタクシーネットワークが、Cybercabの前に故意に飛び出して緊急制動や反応速度を試す利用者に対し、ゼロトレランス方針を適用していると伝えた。現在把握されている制裁は、7日間のサービス利用停止だという。
Baseunerはあわせて、Teslaがこうした行為を識別し、特定の利用者アカウントにひも付けられるとも説明した。車内カメラや外部センサー、車両群の遠隔データを通じて、意図的な歩行者妨害を検知し、当該利用者を特定できるとしている。
Teslaが無監督FSDとロボタクシー事業の拡大を急ぐなか、問われているのは技術そのものの完成度だけではない。運転者の監視体制や利用者の安全確保に加え、技術を巡る発信や訴求のあり方にも厳しい視線が向けられている。