Kirkland Signatureの全合成エンジンオイル 写真=Costco

米Costcoが、自社ブランド「Kirkland Signature」の全合成エンジンオイルを値上げし、あわせて購入制限を導入した。原料となるベースオイルの価格上昇と供給逼迫が背景にあり、内燃機関車両の維持コスト押し上げ要因になる可能性がある。結果として、オイル交換が不要な電気自動車(EV)の優位性が相対的に高まるとの見方も出ている。

電気自動車メディアのCleanTechnicaによると、CostcoはKirkland Signatureの全合成エンジンオイル10クォート製品を58ドル(約8700円)に値上げした。あわせて、1回の購入を1点まで、週当たりの購入回数を2回までに制限した。

低価格戦略で知られる大手小売りが販売数量の制限に踏み切ったことで、単なる販促方針の変更ではなく、エンジンオイルの供給網全体にコスト圧力が強まっている兆候と受け止められている。

価格上昇の主因とされるのが、合成エンジンオイルの主要原料であるベースオイルの高騰だ。市場調査会社Independent Commodity Intelligence Servicesのアマンダ・ヘイは、米公共ラジオNPRに対し、ベースオイル価格は戦争勃発後に過去最高水準まで急騰し、3倍超に上昇したと説明した。

米国の構造的な需給も重荷となっている。米国はガソリンやディーゼル、ジェット燃料など主要石油製品では純輸出国だが、ベースオイルでは純輸入国だ。とりわけ合成エンジンオイル向け原料は、米国内での大量生産基盤が相対的に厚くない。

ベースオイルはガソリンやディーゼルと同様、原油精製の過程で生産される。このため製油会社が燃料生産を優先して高い採算を見込む局面では、潤滑油原料の供給が絞られやすく、最終製品価格にも転嫁されやすい。

エンジンオイル価格の上昇は、直近の地政学リスクだけで説明できるものではない。内燃機関の高度化に伴い、高性能・高付加価値の潤滑油需要が増え、コスト上昇圧力はここ数年にわたり積み上がってきた。これに中東情勢の緊張が重なり、上昇ペースが一段と強まったとの分析もある。

こうした動きは、車両の維持コストという観点でEVと内燃機関車両の差をさらに際立たせる可能性がある。プラグインハイブリッド車(PHEV)やレンジエクステンダー型電気自動車(EREV)は内燃機関を搭載するためオイル交換が必要だが、純電気自動車では不要だ。

差が広がるのは燃料費だけではない。定期的に発生する消耗品コストでも開きが生じ得る。ただ、エンジンオイル価格の上昇だけで米国のEV需要が急増するとみるのは早計だ。業界ではEV関連のオンライン検索が増えているとの分析がある一方、燃料費上昇のみでは購買行動が大きく変わらない可能性もあるとして、慎重な見方も出ている。

EV普及の拡大には、充電インフラの改善が引き続き重要な変数となる。燃料費や維持費の上昇で経済性が高まっても、充電の利便性が低ければ、購入判断への影響は限定的になりかねないためだ。

Costcoは車両を直接販売していないが、会員向けインセンティブプログラムを通じて新車購入に一定の影響力を持つ。現在は11月2日まで、Volvoの純電気自動車「EX90」「EX40」「EX30」を対象に、会員ランクと車種に応じて1000〜2000ドル(約15万〜30万円)の期間限定インセンティブを提供している。

この特典はメーカー施策と併用でき、州・地方政府のEV支援プログラムと重複適用できる場合もあるという。

今回の値上げと購入制限は、特定商品の価格改定にとどまらず、内燃機関車両の維持コスト全体が上昇し得ることを示す事例といえる。燃料費と潤滑油コストが同時に上がれば、オイル交換が不要な純電気自動車の維持コスト競争力は相対的に一段と高まりそうだ。

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