評価結果の低さを伝える場面や昇給見送り、解雇を巡る面談を前に、AIを使って事前に練習する管理職が増えている。実際の面談をAIに任せるのではなく、伝え方や言い回しを点検するための活用だ。
米CNBCが報じたところによると、AIコーチングツールはテキスト型のチャットボットから音声ベースのロールプレイまで幅広い。管理職は、反発したり感情的になったりする社員を想定しながら、同じメッセージを繰り返し練習できる。AIからは口調や簡潔さ、表現の仕方についてフィードバックを受けられる。一部のサービスでは、社員の特性データを反映し、より具体的な状況設定も可能だという。
こうした動きの背景には、管理職の面談準備に対する不安もある。The Predictive Indexが7月に管理職399人とCEO・企業リーダー208人を対象に実施した調査では、経営層の74%が「管理職は難しい社員面談に非常に自信を持って対応している」とみていた。
これに対し、管理職の42%は「何を言うべきかは分かるが、どう伝えるべきかが難しい」と答えた。枠組みやコーチングなしに一人で準備している管理職は20%にとどまった。
AIの強みは、反復練習のしやすさにある。時間や場所を問わず同じ場面を何度でも再現でき、言い方がきつすぎないか、同じ口癖を繰り返していないか、不要なあいづちが多くないかといった点を確認できる。専門家は、リスクの高い会話ほど即興より準備が重要であり、AIは面談前にメッセージを磨く「練習相手」になり得るとみている。
一方で、個人情報漏えいのリスクは大きい。調査では管理職の72%が「公開型AIは社員に関する会話の準備に有用だ」と回答し、44%は社員名や評価情報を実際に入力したことがあると答えた。公式なAI利用方針を整備している組織は45%にとどまった。
専門家は、公開型AIに社員名や具体的な評価資料など、個人を特定できる情報を入力しないよう求めている。加えて、企業が承認したシステムであっても、データの保存方針や学習への利用有無を確認すべきだと助言した。
もっとも、AIが人間のコーチを完全に代替するのは難しい。とりわけ解雇のように感情的な負荷が大きい面談では、AIで練習した後も、上司や人事部門とメッセージの内容や法的リスクを再確認することが望ましいという。