AI向け半導体の増産で、水インフラの重要性も高まっている。写真=Reve AI

米アリゾナ州で、コロラド川からの取水削減が半導体産業の拡張計画に影響を及ぼす可能性が強まっている。AI向け半導体の増産やデータセンター建設が進む一方、水需要も急増しており、「米国の半導体復権」と水不足が交錯する構図が鮮明になってきた。

米ITメディアのThe Vergeが9月11日(現地時間)に報じたところによると、米政府の新たな水配分案に基づき、アリゾナ州は2027年から毎年少なくとも76万エーカー・フィートの取水削減を求められる見通しだ。これは現在コロラド川から供給されている水量の4分の1超に当たり、削減対象地域の中でもアリゾナ州の負担が最も大きいとみられている。

アリゾナ州は米国の主要な半導体製造拠点の一つだ。TSMCとIntelはいずれも同州で先端半導体の生産能力を増強しており、AI向けチップ需要の拡大を背景に投資を続けている。

半導体製造は水使用量の多い産業として知られる。一般的な半導体工場では、1日当たり最大1000万ガロンの超純水を使う場合がある。超純水の製造には脱イオン化や逆浸透などの工程が必要で、上水使用量は最大1600万ガロンに達することもある。

TSMCのアリゾナ第1工場の水使用量は、1日当たり約475万ガロン。1万4000世帯超の1日分の使用量に相当する水準だという。TSMCはフェニックスで少なくとも6つの半導体工場を建設する計画で、米政府から最大66億ドル(約9900億円)の支援を受けている。

Intelもアリゾナ州での投資を拡大している。米政府から78億6000万ドル(約1兆1790億円)の支援を受け、新工場2棟の建設と既存施設の拡張に総額320億ドル(約4兆8000億円)を投じる計画だ。2025年には、同州チャンドラーの施設で27億ガロンを超える淡水を取水した。

もっとも、水使用の中心は依然として農業だ。アリゾナ州全体の水使用量に占める農業の比率は70%超で、半導体を含む産業用水は約6%にとどまる。ただ、半導体産業とデータセンターが急速に集積するなか、水需要の増加ペースが新たな課題として浮上している。

アリゾナ州は25年以上にわたり、コロラド川流域の干ばつに直面してきた。気候変動による乾燥化に、長年の過剰利用と人口増加が重なり、水資源不足は深刻さを増している。米内務省は州間協議がまとまらなかったことを受け、8月に独自の水管理案を決定。アリゾナ州のほか、ネバダ州やカリフォルニア州など下流域も削減対象に含めた。

半導体産業にとって、安定した水供給は生産継続を左右する重要条件だ。TSMCはアリゾナで使用した水の約65%を再利用しており、水再生施設の完成後には再利用率を少なくとも90%まで高める計画としている。フェニックス市も、地下貯留水や他の水源を活用することで、短期的な供給には対応可能との見方を示している。

一方、長期的には代替水源の確保や導水管、井戸など追加インフラの整備が必要になる見通しだ。こうした対応に伴うコスト増は、水道料金に波及する可能性がある。フェニックス市は企業と家庭に同一の料金体系を適用しており、TSMCのような大口需要家でも水コスト上昇を避けにくい。

AIの普及は、この問題をさらに複雑にしている。先端半導体工場に加え、チップのパッケージング施設やデータセンターもアリゾナ州に相次いで立地し、水需要が同時に膨らんでいるためだ。アリゾナ州は今、「AI向け半導体の生産拡大」と「限られた水資源の確保」という二つの課題に同時に向き合っている。

水資源の専門家は、水不足が深刻化するほど、農業、産業、居住のどの用途を優先するかを巡る対立が強まる可能性があると指摘する。米国の半導体サプライチェーン再構築に向けた大型投資が続くなか、今後は電力に加え、水もAI・半導体産業の成長を左右する重要インフラになりそうだ。

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