Artificial Analysis(AA)は、韓国が独自基盤モデルプロジェクトを追い風に、世界トップ3のAI国家へ急速に存在感を高めているとの見方を示した。一方で、モデル性能では米国・中国の最先端勢になお差があり、製造や科学分野での強みを伸ばすと同時に、AGIを見据えた汎用能力の開発も並行して進めるべきだと提言した。
AAの共同創業者ジョージ・キャメロン氏は14日、LG AI研究院が開いた「LG AIトークコンサート2026」で、同研究院のイ・ホンラク共同研究院長と対談した。キャメロン氏は「韓国のAIエコシステムの発展スピードは非常に速く、印象的だ」と述べたうえで、「現時点でAGI競争を主導しているわけではないが、常にAGIを視野に入れ、汎用能力を高めていく必要がある」と語った。
韓国の成長要因としては、国内AI企業の取り組みと政府の独自基盤モデルプロジェクトを挙げた。「この1年で韓国がどれほど速く発展したかが分かる」とし、「韓国企業の努力に加え、ソブリンAI基盤モデルプロジェクトを通じた政府支援の寄与も大きい」と評価した。
AAは韓国を現在、「世界トップ3のAI国家」の一つと位置付けている。キャメロン氏は「韓国はソブリンAI分野で明確な先導国だ」と強調し、「韓国のソブリンAIイニシアティブは、他国にとっても刺激となるモデルになり得る」との見方を示した。
もっとも、韓国のモデルがすでにグローバル最前線に到達したと見るのは早計だという。イ氏が韓国モデルとフロンティアモデルの差を尋ねると、キャメロン氏は「性能面では、依然として米国と中国の先導モデルに後れを取っている」と答えた。
そのうえで、モデル競争力を単純な知能スコアだけで測るべきではないとも指摘した。モデル間ではコストが100倍以上開くこともあり、オープンウェイトモデルには、企業が自社ハードウェア上で直接運用したり、用途に応じて調整したりできる利点があるという。韓国語のような地域特化型の能力も、韓国製モデルを選ぶ理由になり得るとした。
AAによると、フロンティア級のオープンウェイトモデルの性能は、最上位のクローズドモデルに対しておおむね3~9カ月遅れの水準を維持している。コスト効率や柔軟性を重視する企業需要を踏まえれば、オープンウェイト活用の価値は今後も続くとの見通しだ。
対談では、ベンチマーク評価の限界も論点に上った。イ氏は、一部モデルが広く知られた特定ベンチマークに過度に最適化される可能性に触れ、ベンチマーク慣れによる見かけ上の性能向上と、モデル自体の実質的な知能向上をどう見分けるかを問いかけた。
なお、独自基盤モデルの第2次評価では、AA知能指数(AAII)が評価項目の中で最も高い配点を占める中核指標だった一方、最高点だったMotif Technologiesが選定から外れ、最低評価だったLG AI研究院が選定対象に残ったことで、評価方式を巡る論争も起きている。
これに対しキャメロン氏は、「AAIIは10の評価で構成されており、特定のベンチマークに集中した性能改善が、モデル全体の能力向上として過大評価されるのを防ぐ設計になっている」と説明した。
さらに「最新のAAIIの約50%は非公開テストセットで構成している」とし、評価手法は公開する一方、実際の設問は公開していないと述べた。ベンチマーク自体も継続的に更新し、特定評価への過度な最適化を防いでいるという。
今後の韓国AI戦略についてキャメロン氏は、先端製造や企業の知識労働といった強みのある領域に集中しつつ、それを支える汎用知能の開発も継続すべきだと強調した。
「先端製造業や企業の知識労働など、韓国にとって重要なユースケースに注力できる」としたうえで、「言語モデルは汎用知能を基盤に、その上に特定の専門能力を実装する。韓国のAIエコシステムがAGI競争を主導していなくても、汎用能力の開発は続けるべきだ」と述べた。
韓国が強化すべき技術領域としては、科学AI(AI for Science)、エージェント、コーディング能力を挙げた。「科学AIは、AIが極めて大きな影響を及ぼし得る分野だ」とし、「長時間にわたって業務を遂行できる知識労働エージェントや、現実世界で実際の行動を実行させるコーディング能力も重要だ」と説明した。
AAは今後、AI評価の軸が単純な質疑応答能力から、実務遂行能力へ移っていくとみている。
キャメロン氏は「今後重要になるベンチマーク領域の一つは、エージェント型の知識労働だ」と述べた。「メール送信、PowerPointの作成、Excel分析など、企業で人が実際にこなしている業務をAIがどこまで担えるかが重要になる」と指摘した。
さらに、製造現場での活用にも言及した。「製造ラインで問題が起きた場合、エージェントが自ら検知し、必要な措置を取り、その結果を人に知らせる必要がある」とし、AIエージェントは人の指示を待つ「反応型」から、状況を自律的に把握して動く「先制型」へ進化していくとの見通しを示した。