AGI競争を技術優位の問題ではなく、国家安全保障と軍事対応の問題として扱った文書が注目を集めている(写真=Reve AI)

中国が米国に先んじて汎用人工知能(AGI)を実現した場合に備え、サイバー攻撃だけでなくデータセンターへの物理攻撃も検討すべきだ――。こうした見解を、米国の元安全保障担当者が示した。AGI開発競争が、技術分野にとどまらず国家安全保障上の争点に発展しかねないとの問題意識を浮き彫りにしている。

TechRadarが今月11日(現地時間)に報じたところによると、バラク・オバマ政権で国家安全保障に携わったジェイコブ・ストークス氏は、「超大国とAGI」と題する文書を公表し、中国がAGIで先行した際に米国が取り得る阻止手段をあらかじめ検討すべきだと訴えた。

文書で示した選択肢には、サイバー攻撃に加え、中国のAIデータセンターをミサイルや爆弾で破壊する物理攻撃も含まれる。ストークス氏は、中国のAGI開発が米国の安全保障に直接的な脅威となり得るとして、単なる技術競争ではなく国家レベルの対応戦略が必要だと強調した。

AGIは、人間並み、またはそれを上回る汎用的な推論・問題解決能力を持つAIを指す。ストークス氏は、AGIが自己保存を図るような振る舞いを見せる可能性があるほか、大規模なサイバー攻撃や新たな兵器開発に利用されるおそれがあると懸念を示した。

また、想定外の技術的ブレークスルーによって、中国が先にAGIを実現するシナリオにも言及した。

そのうえで、対応手段は段階的に検討すべきだと指摘した。初期段階ではAGIシステムを標的とするサイバー攻撃を用い、それで阻止できない場合や脅威水準が高まった場合には、より強力な手段へ移行する可能性があるとしている。

一方、物理攻撃については、最も危険で衝突拡大の可能性が高い選択肢だと位置付けた。

問題は、こうした対応が実際の軍事衝突につながりかねない点にある。中国のデータセンターを直接攻撃すれば報復を招く可能性があるうえ、そもそもAGIを実際に実現したかどうかの判定や、どの国がより安全に運用できるかの判断にも大きな不確実性が伴うためだ。

今回の主張は、AGI競争が単に高性能なAIを先に開発する技術競争にとどまらない可能性を示している。米中がAGIを国家安全保障上の資産と見なすなら、AIデータセンターや計算資源を支えるインフラも戦略施設として扱われる公算が大きい。

もっとも、AGIの実現時期や実際の能力がなお不透明ななかで、先制的な物理攻撃まで含む対応戦略は大きな論争を呼ぶ可能性が高い。今後は、どちらが先に技術を確立するかだけでなく、開発の有無をどう検証し、誤認や衝突拡大を防ぐための抑止・検証の枠組みをどう整えるかが主要な課題となりそうだ。

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