AnthropicとOpenAIのAI開発ペース減速論を批判したデイビッド・サックス氏(写真=Shutterstock)

米大統領科学技術諮問委員会(PCAST)の共同議長を務めるデイビッド・サックス氏が、AnthropicとOpenAIによるAI開発ペースの減速論を批判した。モデルの危険性を懸念するのであれば、両社が自らの責任で減速を判断すべきであり、それを新たな規制枠組みの整備と結び付けるべきではないとの立場を示した。

ITmediaが14日付で報じたところによると、サックス氏は12日、X(旧Twitter)で、Anthropicのダリオ・アモデイCEOのエッセイと、これに同調したOpenAIのサム・アルトマンCEOの投稿に反応した。

サックス氏は、AnthropicとOpenAIはすでに「フロンティアAI」そのものだと指摘した。市場シェアや売上高の伸び、モデル性能といった指標で両社がフロンティアAIを寡占しており、再帰的自己改善(RSI)によってその差はさらに広がっていると、両社自身が主張してきたとした。

そのうえで、非公開モデルが実際に危険で、開発ペースの減速を検討すべき段階にあるのなら、両社が責任を持ってそう判断すること自体は支持できると述べた。

問題は、その減速論を規制要求と結び付けている点だとした。サックス氏は、あたかも外部の許可がなければ減速できないかのように振る舞うべきではないとし、減速には外部承認が必要だとか、新たな規制装置の整備が先だとする主張を批判した。

特に問題視した点として、サックス氏は5項目を挙げた。第1に、他者の許可が必要であるかのように振る舞っている点。第2に、カルテル形成のために独占禁止法の適用除外を求めている点。第3に、製造物責任に先立つ規制上の承認手続きを要求している点。第4に、Anthropicの投資家や従業員が関与するMETRを、独立組織であるかのように扱っている点。第5に、フロンティアAIではない競合企業まで同じ評価機関が監視すべきだと主張している点だ。

また、開発減速の動機を純粋な利他性に基づくものだと見せる姿勢にも異議を唱えた。自社製品が深刻なサイバー攻撃に悪用された場合、両社は巨額の製造物責任を負う可能性があると指摘した。

さらに、市場はすでに、予測不能な挙動や容認できない行動を示すモデルを敬遠しているとも主張した。Hugging Faceの事例以降は、一部の性能を信頼性や予測可能性と引き換えにすることが、両社にとって事業面でも有利に働く可能性があると説明した。

サックス氏は一方で、開発ペースの調整を巡る議論そのものは、AI規制を巡る議論の幅を広げる可能性があるとの見方も示した。バーニー・サンダース米上院議員が主張した全面停止論よりも、より知的な議論が可能だとした。

ただ、中国がこうした世界的な合意に加わる可能性は極めて低いとも付け加えた。

また、フロンティアAIの基準づくりも最終的にはAnthropicとOpenAIが主導することになると主張した。超知能を作らない最も簡単な方法は、両社が作らないことで合意することだとし、その実現のために規制枠組みが必要だと求めれば、国民や政治システムに対する脅しのように受け取られかねないと述べた。

加えて、まず自発的に実行してこそ、将来の規制議論に必要な信頼を得られるとも指摘した。そうでなければ、規制の取り込みや選挙期の世論戦とみなされる可能性があるとした。

サックス氏は南アフリカ出身。PayPalで初代最高執行責任者(COO)を務めた後、Yammerを創業し、のちにMicrosoftへ売却した。2017年にはCraft Venturesを共同創業している。

2025年にはトランプ政権でホワイトハウスのAI・暗号資産担当特別顧問を務めたが、特別政府職員(SGE)の勤務日数上限に達したため、2026年3月に退任した。その後は、ホワイトハウス科学技術政策室傘下のPCASTで共同議長を務めている。

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