国際エネルギー機関(IEA)が2026年の原油供給見通しを再び引き下げた。湾岸地域の供給が全面回復する時期も2027年にずれ込む見通しで、原油市況を通じたインフレ圧力への警戒が、ビットコイン市場で意識される資金調達環境の改善期待に不透明感を広げている。
CryptoSlateが13日に報じたところによると、IEAは11日公表の報告書で、2026年の世界の原油供給量を日量1億70万バレルと見込んだ。8月12日時点の見通しである日量1億200万バレルから、130万バレル引き下げた。湾岸地域の供給が全面回復する時期については、2027年まで遅れるとの見方を示した。
需要見通しも下振れした。IEAは2026年の世界の石油消費量が2025年比で日量250万バレル減少すると予測している。8月時点の見通しに比べ、減少幅は日量94万バレル拡大した。需要鈍化は供給逼迫の緩和要因になり得る一方、在庫動向を見ると現物市場の需給はなお引き締まっている。
IEAは、8月の世界の石油在庫が9500万バレル減少したと推計した。今年2月以降の累計減少量は5億700万バレルに達した。需要が弱含んでも、石油市場の供給不足がなお解消していないことを示す内容だ。
供給面では一部に改善の兆しもある。IEAは、ホルムズ海峡を迂回する輸送の増加や、米軍の護衛下で海峡通航が継続したことを受け、原油輸出の減少幅が縮小したと説明した。
もっとも、湾岸地域からの精製品と液化石油ガス(LPG)輸出は、8月時点でも2月に比べてほぼ60%低い水準にとどまった。供給回復は進んでいるものの、品目や地域によって回復ペースにばらつきがあるという。
ビットコイン投資家が注視するのは、原油価格そのものよりも、インフレと金利見通しへの波及だ。ドル建て資金を借り入れてビットコインを保有する投資家にとって、エネルギー価格の上昇圧力が長引けば、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が後退し、資金調達環境の改善が遅れる可能性がある。もっとも、IEAや関連資料がビットコインの借入コストの変化を直接示したわけではない。
インフレ期待も変数となっている。ミシガン大学が公表した9月の速報調査では、1年先の期待インフレ率が8月の4.0%から4.6%へ上昇した。長期の期待インフレ率も3.3%から3.4%へ上がった。長期の上昇幅は小さいものの、1年先の期待インフレ率は今年6月以降で最も高い水準となった。
クリストファー・ウォラーFRB理事は9月3日の講演で、エネルギー価格の上昇が幅広い財・サービス価格に波及する現象は「これまで確認されていない」と述べた。一方で、エネルギー価格が再び上昇し、長期の期待インフレ率が高まる局面はリスク要因になり得るとも指摘した。
ウォラー理事は、インフレ率が2%目標に向けた改善基調を維持するなら、現在の金利水準を据え置くことは可能だと説明した。その一方で、8月の物価指標が改善の流れを反転させる内容となれば、利上げを検討する可能性にも言及した。9月15〜16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前にした条件付きの判断といえる。
市場の関心は、弱含む石油需要と一部の供給回復が、実際に物価圧力の抑制につながるかに集まっている。供給回復が続き、エネルギー価格のインフレへの波及が限定的にとどまれば、資金調達環境の改善期待が持ち直す可能性がある。
逆に、原油価格の上昇圧力が残れば、ビットコイン投資家が期待する金融コストの低下は後ずれしかねない。石油需要の減少だけではビットコイン市場の安心材料になりにくく、在庫減少や供給回復の遅れ、期待インフレ率の上昇リスクが重なるなか、市場は原油価格そのものより、金利見通しへの影響を一段と注視している。