SpaceXに続く世界の超大型新規株式公開(IPO)候補として、AnthropicやOpenAIなどAI企業への関心が高まっている。Anthropicには年内上場観測が浮上しており、OpenAIやDatabricksも有力候補として取り沙汰される。大型案件が相次ぐ場合、市場がどこまで資金を吸収できるかも焦点になりそうだ。
金融業界によると、Anthropicは年内の上場を準備している。市場では、早ければ来月中旬にも上場手続きに入るとの見方があり、企業価値は最大2兆ドルに達する可能性があるとの観測も出ている。
Bloombergは9日、AnthropicがSpaceXの860億ドル(約12兆9000億円)の公募記録を上回るIPOを目指していると報じた。KB証券は、Anthropicの公募規模について1000億ドル(約15兆円)との見方を示した。企業価値だけでなく、調達額でもSpaceXを上回る可能性があるというわけだ。
もっとも、SpaceXとAnthropicはともに将来成長への期待を強く織り込んだ評価を受ける一方、事業基盤は大きく異なる。SpaceXはロケット打ち上げと衛星通信サービス「Starlink」を軸に事業を拡大してきた。さらにxAIの買収を通じてAI事業も取り込み、宇宙輸送・通信インフラとAIをあわせて評価される構図になっている。
一方のAnthropicは、AIモデル「Claude」とコーディングツール「Claude Code」を主力に、企業のAI導入需要を収益化している。ロケットや衛星網の構築・運用実績が重視されるSpaceXと比べると、Anthropicではモデル性能、法人顧客の獲得、利用量の拡大、価格競争力が評価の軸になる。両社の時価評価が近いとしても、それを支える事業内容やコスト構造は切り分けて見る必要がある。
Anthropicの高い評価を支える根拠として挙がるのが、急速な売上成長だ。KB証券によると、7月時点の年間換算売上高は650億ドルだった。これは特定時点の売上水準を年換算した数値で、確定した通期売上高とは異なる。この数値を基準に企業価値2兆ドルを当てはめると、売上高倍率は約31倍となる。
一部のAI関連上場企業では売上高倍率が30倍を超える例もあり、Anthropicの想定評価を一概に割高とは言い切れないとの見方がある。ただ、競合各社の値下げで利用料が下がるなか、AIモデル開発やサービス運用に必要な計算コストが膨らめば、売上成長だけで企業価値を説明するのは難しくなる。
後続の超大型候補としてはOpenAIも有力だ。海外メディアは、OpenAIが今年または来年に大規模上場に踏み切る可能性があると伝えた。市場では初期段階の観測として、少なくとも600億ドル(約9兆円)の調達と、最大1兆ドル(約150兆円)の企業価値が取り沙汰されているが、日程や規模の変動余地は大きいとみられている。
OpenAIは、ChatGPTを通じた消費者向けサービスに加え、法人向けAIや開発者向けモデル提供も展開する。広いユーザー基盤を有料売上へどこまで転換できるかに加え、大規模な計算インフラ投資の負担が主要な評価材料になる。Anthropicとの競争が激しくなるほど、技術力だけでなく、顧客維持率やコスト管理が上場後の業績を左右する可能性が高い。
Databricksも大型上場候補の一角とみられている。同社は先月13日、50億ドル規模(約7500億円)の資金調達を発表し、企業価値は1900億ドルと評価された。2月の1340億ドルから約42%上昇した水準だ。年間換算売上高は70億ドルに達し、直近1年間のキャッシュフローも黒字を確保したとしている。
Databricksは、企業がデータを保存・管理・分析し、AIサービスを開発できるよう支援するプラットフォームを提供する。顧客企業のAI導入やデータ活用の拡大が成長につながる事業構造で、AnthropicやOpenAIがAIモデルの競争力を軸に評価されるのに対し、Databricksは法人向けプラットフォームの利用拡大と継続的な売上創出力が判断材料となる。
上場候補はAIモデル企業に限らない。英国のAIクラウド企業Enscale、電力供給企業Aggreko、消費者向け医療技術企業Oura Healthなども有力候補に挙げられている。投資対象がAIモデルそのものから、計算インフラ、電力、応用サービスへと広がっている構図だ。
超大型IPOが相次げば、これまで未上場市場に集中していた投資機会が個人投資家にも広がる。一方で、既存の上場株と新規公開株が同じ投資マネーを奪い合うことになる。AI企業による社債発行まで増える局面では、成長期待が高くても、高い公募価格を市場が十分に消化できるかを見極める必要がある。
キム・ボヨン氏(KyoBo Securities・リサーチ委員)は「超大型IPOとAI関連債の発行が同時に増えれば、既存の上場株式に向かう資金が分散する可能性がある」と分析した。公募価格と上場後の収益率、社債の発行条件などが、市場の資金吸収力を示す指標になり得るという。
韓国の個人投資家にとっても、投資アクセスは上場前後で変わる。上場前は、未上場株式を組み入れたファンドなど間接投資商品の販売有無や加入要件に左右され、投資機会は限られる。米国市場に上場すれば、当該銘柄を取り扱う韓国の証券会社の外国株口座を通じて、取引時間中の売買が可能になる。
もっとも、公募価格で株式の配分を受けるIPO参加は別問題で、証券会社が割当を確保しているか、関連サービスを提供しているかに左右される。韓国株式市場では、こうした大型案件が投資資金の移動を促す変数になり得る。
韓国預託決済院によると、SpaceXの上場後1カ月間、韓国投資家による米国株の純買越額のうち約97%がSpaceXに集中した。Anthropicが上場した場合も、AI成長に直接投資したい需要を呼び込み、韓国の半導体など関連銘柄の需給に影響を及ぼす可能性があるとの見方が出ている。
キム・ミンギュ氏(KB証券・研究員)は「成功の成否にかかわらず、韓国投資家の需給はAnthropicに集中する可能性が高い」と指摘した。そのうえで「募集が不調に終われば、短期的には関連するクラウドやメモリーなど後方産業への懸念が広がる可能性があり、ネガティブに受け止められ得る」と述べた。