元CFTC委員長のクリス・ジアンカルロ氏は、クラリティ法案の行方にかかわらず業界のイノベーションは続くとの見方を示した。写真=Reve AI

クリス・ジアンカルロ米商品先物取引委員会(CFTC)元委員長は、米議会で審議中のクラリティ法案が成立しなくても、暗号資産業界の技術革新は止まらないとの見方を示した。法案審議の停滞とは切り離して、業界の進化は続くと強調した。

3日、ブロックチェーンメディアのCoinPostによると、ジアンカルロ氏はポッドキャスト「The Wolf of All Streets」のインタビューで、業界が同法案を過大視すべきではないと語った。

クラリティ法案は、デジタル資産の市場構造を定める法案だ。2025年7月17日に米下院を294対134で通過したが、上院では銀行委員会での採決後、本会議での採決に進めないまま審議が停滞している。上院は8月10日から9月11日まで休会に入る予定で、残された審議期間は1週間程度にとどまる。

ジアンカルロ氏は、法案処理の遅れとは別に、業界のイノベーションの流れは続くとみている。クラリティ法案の成否にかかわらず革新は進むとした上で、最終的に法案が廃案になれば、「事業基盤を築いてきた企業と、そうでない企業の差が広がる可能性がある」と述べた。

一方で、取引監視の範囲が広がることへの懸念も示した。クラリティ法案が、2025年に制定された「ジーニアス法案」と同様、暗号資産取引を銀行秘密法に基づく監視の枠組みに組み込む内容になっている点を問題視した。銀行秘密法はマネーロンダリング対策(AML)の制度だが、実際には幅広い金融取引の監視につながりかねないと指摘。こうした仕組みが、米憲法修正第4条が保障する個人の取引のプライバシーを侵害するおそれがあると警告した。

クラリティ法案の審議が上院で進まない背景については、政界内部の利害が大きく影響していると分析した。遅延の理由をトランプ政権周辺の倫理問題だけで説明するのは難しいとし、ホワイトハウス側の「オウンゴール」だけではなく、より複合的な要因があると述べた。民主党内では、左派色の強い候補による予備選挑戦への警戒感が強いほか、資金配分の主導権が政府から民間に移ることへの抵抗もあると説明した。

予測市場の規制権限を巡る州政府と連邦政府の対立についても見解を示した。カジノやスポーツブックは事業者がオッズを設定する業態で、州単位の規制になじみやすい一方、予測市場は参加者が価格を形成する市場であり、連邦規制の対象とすべきだと主張した。この構造については、既存タクシー業界の反発を受けながらも普及したUberの事例になぞらえて説明した。

ジアンカルロ氏は、予測市場は最終的に連邦規制の枠組みで扱われる可能性が高いとみている。判断基準として「取引の両側を選べるか」を挙げ、そうした性格を持つのであれば、市場として分類するのが妥当だと述べた。最終的には連邦最高裁まで争いが及ぶ可能性にも言及した。

CFTCの規制能力についても擁護した。2008年の金融危機当時、CFTCの監督下にあった市場では崩壊した例が一つもなかったとして、同委員会の監督能力を強調した。一方、現在のCFTCは、2025年12月に就任したマイケル・セリック委員長を含めても、5議席のうち埋まっているのは1議席にとどまっている。

こうした中、ステーブルコイン規制の強化も進みつつある。米連邦準備制度理事会(FRB)は、決済用ステーブルコインの発行体を想定した規制案を他当局と共同で公表し、ジーニアス法案の施行に合わせて銀行並みの顧客確認手続き(KYC)を求める方向性を示した。クラリティ法案の行方とは別に、米国のデジタル資産規制は、市場構造の整備と取引監視の強化を並行して進める局面に入っている。

キーワード

#暗号資産 #デジタル資産 #CFTC #クラリティ法案 #銀行秘密法 #AML #ステーブルコイン #FRB #予測市場
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.