Fordは、中国の電気自動車(EV)メーカーが5〜10年以内に米国市場へ参入する可能性を見込み、社内で対応の準備を進めている。貿易規制や技術規制が続いても、中国勢の影響力拡大は避けにくいとみており、新たなEVプラットフォームで対抗する構えだ。
電気自動車専門メディアのInsideEVsが7月31日(現地時間)に報じたところによると、ジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)ら、Ford経営陣は今週、従業員向けに、中国EVが今後10年以内に米市場へ入ってくるとの見通しを示した。
Fordは、貿易障壁や中国製車両技術を巡る禁止措置、米上院での関連法案の動きがある中でも、中国メーカーの米参入の可能性を否定していない。経営陣は参入時期を5〜10年とみており、実際にはその後半になる公算が大きいという。Fordの広報担当者は、非公開の従業員向け会合についてコメントを控えた。
ファーリー氏はこれまでも、中国EVの拡大に強い警戒感を示してきた米自動車業界の経営者の一人だ。中国EVの米国参入を認めるべきではないと発言したこともあるが、具体的な時間軸が示されたのは今回が新しい。
もっとも、米市場への参入障壁は依然として高い。バイデン政権末期に確定した中国製車両技術を巡る禁止措置により、Polestarは米市場での展開が難しくなった。議会では、中国資本の比率が15%を超える自動車メーカーを対象とする法案も検討されている。こうした規制環境は、中国企業の直接進出を阻む大きな要因となっている。
それでもFordが脅威を過小評価していない背景には、中国メーカーの開発スピードがある。中国の自動車業界は車両開発サイクルを最短18カ月に短縮しており、西側メーカーの5〜7年に比べて大幅に速い。こうしたスピード競争は中国国内市場の過熱も招いている。年初から中国で新型EVが650モデル投入されたことからも、供給競争が極めて激しい局面にあることがうかがえる。
北米市場の環境も無視できない。カナダとメキシコでは中国EVの販売が認められており、低価格のバッテリーEVに対する消費者の関心もここ数カ月で高まっている。米国内で規制が維持されたとしても、周辺市場を通じて中国ブランドの存在感が強まる可能性をFordが織り込んでいるとの見方もできる。ただ、Fordは米市場への直接参入を前提に備えを進めているもようだ。
対抗策の柱は、新たなEVプラットフォームの投入だ。FordはEVスタートアップや中国勢に対抗するため、ゼロベースで設計した「ユニバーサルEVプラットフォーム」を準備している。第1弾は中型ピックアップトラックで、2027年の発売を予定する。
北米のEV競争は、関税や輸入規制だけで優位を保てる段階を超えつつある。焦点は開発スピード、価格競争力、プラットフォーム効率へと移っており、Fordが中国EVの米参入を「時間の問題」と位置付けて対応時期を具体化したことで、今後の米国規制と北米市場再編の行方にも関心が集まりそうだ。