生成AIを含むAIの普及が、世界の中央銀行による金融政策運営を複雑にしている。物価安定、完全雇用、金融安定という主要目標のすべてにAIが同時に影響を及ぼし、従来の判断枠組みが当てはまりにくくなっているためだ。
スイス・バーゼルに本部を置く国際決済銀行(BIS)は最近公表した報告書で、AIは需要・供給の両面に作用するだけでなく、景気循環や産業構造にも変化をもたらしていると指摘した。その結果、中央銀行がこれまで前提としてきた政策判断の枠組みが機能しにくくなっているという。
米国などAI技術を先導する国では、データセンター建設や半導体投資の拡大が短期的な投資ブームを生み、総需要を押し上げている。株高による資産効果が家計消費を下支えする面もある。一方で、資産価格にAIへの期待が過度に織り込まれ、バブルにつながる可能性があるとの見方も示した。
中期的には、AIが労働市場を大きく変える可能性がある。大幅な雇用減少を懸念する見方はあるものの、現時点でそれを裏付ける明確な証拠は限られるとした。半面、AIが生産性を大きく押し上げれば、供給力の拡大を通じてインフレを抑えるプラスの供給ショックとなる可能性もある。
報告書をまとめたBISのエコノミストInaki Aldasoro氏らは、AIの経済的影響を巡る不確実性が、金融政策と金融安定の両面で新たな課題を突き付けていると説明した。産業ごとに影響の出方が異なるため、経済の基調判断はいっそう難しくなるとしている。さらに、不確実性が大きいほど、政策判断を誤るリスクも高まると警鐘を鳴らした。
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