Starlinkが、イーロン・マスク氏の事業群における主力収益源として存在感を強めている。Business Insiderは10月6日(現地時間)、2025年のSpaceXの売上高186億ドルのうち、6割超をStarlinkが占めたと報じた。黒字だったのはStarlink部門だけだったという。
Starlinkは167カ国以上で1300万人にサービスを提供している。SpaceXは今後、数万基規模で衛星を追加投入し、遠隔地向けサービスから世界規模の無線通信・ブロードバンド事業へと育成する方針だ。Starlinkは収益源にとどまらず、マスク氏の世界的な影響力を広げる基盤にもなっている。
その影響力が最も鮮明に表れたのが、ウクライナでの運用だ。ウクライナ軍は、ロシアの電波妨害を受けにくい通信手段としてStarlinkを活用し、ドローン運用やリアルタイムの照準修正でも依存してきた。一方で、戦場通信の中核が民間企業トップの判断に左右され得るリスクも浮き彫りになった。
マスク氏は2023年、クリミア半島への攻撃を支援するためのStarlink有効化要請を拒否したと明らかにしている。当時は、SpaceXが戦争行為に直接関与することへの懸念を理由に挙げた。ただ、2026年2月には、ウクライナの当時の国防相の要請を受け、ロシア軍による違法なStarlink利用を遮断した。この措置により、ロシア軍は大きな支障を受けたとされる。ウクライナは、マスク氏の判断やロシアによる直接攻撃に備え、代替となる戦場通信手段の確保も進めている。
SpaceXはStarlinkの展開先を、航空分野や移動通信市場にも広げている。すでに40社超の航空会社がStarlinkベースの機内Wi-Fiを導入した。さらに、AT&T、Verizon、T-Mobileといった既存大手をにらみ、移動通信事業の本格展開も予告している。これに向け、規制当局にはV3 Starlink衛星10万基の打ち上げ計画を提出した。ただ、低軌道衛星網は農村部や遠隔地では強みを発揮する一方、大都市では効率面で不利になる可能性も指摘されている。
世界展開が進むほど、マスク氏の地政学的な影響力も強まる。台湾は7月、SpaceXとの交渉を阻んでいた外資規制を改正した。インドでは、地政学的な懸念を背景にサービス開始が遅れている。ケンブリッジ大学ベネット公共政策大学院のアレッシオ・テルツィ氏は、各国政府がマスク氏と「ファウスト的取引」を結ぶリスクに直面しかねないと指摘した。
Starlinkの競争力は、単なる衛星インターネットにとどまらず、軍事通信、機内Wi-Fi、移動通信へと拡張できる点にある。同時に、サービスの拡大に伴って、通信インフラを左右する力が特定企業とその経営者に集中する構図も、いっそう鮮明になっている。