米資産管理プラットフォームのiTrustCapitalで、ビットコインへの資金流入が強まっている。前四半期には約10億ドル(約1500億円)が流入し、このうち数億ドルは顧客が保有していた現金ポジションからビットコイン投資に振り向けられたという。顧客の約半数がビットコインを購入しており、同社は短期的な値動きを追う買いではなく、資産配分を見据えた動きとの見方を示した。
ブロックチェーンメディア「Bitcoin Magazine」が10月5日(現地時間)に報じたところによると、iTrustCapitalの最高経営責任者(CEO)、ケビン・マロニー氏が同社プラットフォーム上の資金動向について明らかにした。
マロニー氏は、iTrustCapitalの顧客数が10万人を超えるとした上で、最近の投資行動について「価格急騰を見て後追いで買う、いわゆる“ローソク足を追う”動きではない」と説明した。短期的な上昇局面に反応した買いではなく、ポートフォリオの一部としてビットコインを組み入れる動きだとしている。
中でも注目しているのが退職資金の動向だ。マロニー氏によると、退職資金の投資家は一般に資産の5〜15%をビットコインなどに配分する傾向がある。短期売買資金に比べて価格変動時にも流出しにくく、滞留性の高い資金だと評価した。
また、待機資金の投資転換も進んでいる。前四半期にiTrustCapitalへ流入した約10億ドルのうち、数億ドルは顧客がすでに保有していた現金ポジションから拠出されたとみられる。マロニー氏は、投資家が様子見姿勢を崩し、実際の投資に踏み切り始めた兆候だと受け止めている。
同氏は、現在はiTrustCapitalの顧客の約50%がビットコインを購入しているとも述べた。
一方で、市場環境を楽観視しているわけではない。暗号資産市場では投資家の疲弊感が続いているほか、規制の不確実性も依然として重荷になっているという。特に「Clarity」法案の採決が可決に至らなかった後、市場が期待したほど速いペースで方向感を得られていないと指摘した。
その上で、必要な規制整備はなお道半ばだとの認識を示した。制度面の不確実性を和らげ、伝統的な金融市場と暗号資産市場をつなぐ基盤をさらに整備する必要があるとしている。
iTrustCapitalは事業領域の拡大も進めている。従来の暗号資産投資に加え、株式や上場投資信託(ETF)など伝統的な金融商品にもラインアップを広げている。マロニー氏は、利回りを求める顧客だけでなく、伝統金融資産への投資需要も取り込む狙いがあると説明した。
さらに、暗号資産と伝統金融を接続する過程では、カストディ事業者や外部ベンダー、資産間の接続構造が新たなリスク要因になり得るとも指摘した。同社は定量売買ツール「Q」も運営しているが、足元の投資行動を見極める上で重要なのは短期売買機能そのものではなく、実際に資金がどこへ移動しているかだとしている。
マロニー氏は今後18カ月の動向を注視しつつ、マクロ環境とビットコインETFへの資金フローをあわせて確認していく考えも示した。
市場では、こうした資金フローがビットコイン需要の性格変化を示すシグナルになり得るとの見方が出ている。退職口座を中心に長期志向の資金流入が続けば、短期の投機資金とは異なる需要基盤を形成する可能性がある。
今後のビットコイン市場を左右するのは、長期資金の流入がどこまで続くかに加え、規制整備と伝統金融インフラの拡充がそれを後押しできるかどうかだ。