ビベック・ラマスワミ氏は、オハイオ州知事選で暗号資産を前面に押し出す姿勢を後退させている。共和党の大統領候補指名争いではビットコインやマイニング支援を積極的に訴えていたが、足元ではデータセンター建設や電力負担といった地域密着の争点に比重が移っている。
ブロックチェーン系メディアCointelegraphが5日、報じた。ラマスワミ氏はデジタル資産運用会社の持ち分を保有し、暗号資産業界関係者から資金支援も受けている一方、最近の公開発言では関連する発信が大きく減っているという。
ラマスワミ氏は2024年の共和党大統領候補指名争いで、ビットコインとマイニングを公然と擁護し、中央銀行デジタル通貨(CBDC)には強く反対していた。演説や業界イベントでも、暗号資産に前向きなメッセージを繰り返していた。
だが、2026年9月時点ではその色合いが薄れている。オハイオ州務長官のフランク・ラローズ氏が9月17日、州政府の手数料やサービス料金の支払いで暗号資産を受け付けると発表した後も、ラマスワミ氏はこの件について公の発言をしていない。
もっとも、暗号資産との結び付きがなくなったわけではない。ラマスワミ氏は2025年2月の知事選出馬表明に先立ち、オハイオ州の「戦略的暗号資産準備金」法案を支持した。同法案は、州としてビットコイン準備金の構築を認める内容とされる。
ラマスワミ氏が2022年に共同創業した資産運用会社Striveは、2025年9月に「ビットコイン債券ETF」への参入計画を公表した。ビットコインを購入する企業が発行する債券に焦点を当てる商品だ。
資金面でも、暗号資産業界との距離は近い。ラマスワミ氏の選挙陣営は暗号資産での寄付を受け付けている。
トランプ一族の暗号資産企業World Liberty Financial(WLFI)の共同創業者であるチェース・ヘロ氏、ジャック・フォークマン氏、ザカリー・ウィトコフ氏は、それぞれ法定上限の1万6615ドルを寄付した。
また、Susquehanna International Groupの共同創業者ジェフ・ヤス氏はスーパーPACに2000万ドルを拠出した。New York Digital Investment Group(NYDIG)創業者のロス・スティーブンス氏は600万ドル、イーロン・マスク氏は500万ドルを寄付した。Bitcoin Voter Projectも5000ドルを支援している。
ラマスワミ氏本人の暗号資産関連の保有資産も大きい。Striveは8月28日時点で2万3156BTCを保有していると報告した。
米証券取引委員会(SEC)への8月の開示資料では、ラマスワミ氏が同社株を569万3897株保有していることが示された。9月26日時点の評価額は1億7000万ドルを超えたという。
さらに4月時点では、Coinbaseのウォレットを通じて1000ドル超相当のビットコインとイーサリアムを直接保有していることも申告していた。
それでも選挙戦では、暗号資産よりも地域の生活課題が優先されているようだ。Digital Currency Group(DCG)が2024年5月に実施した世論調査では、オハイオ州の有権者は他州より暗号資産に否定的との結果が出た。
回答者の79%は暗号資産を保有したことがないと答え、77%はデジタル通貨に否定的な認識を示した。調査では、オハイオ州の有権者は暗号資産に対して「より否定的」と位置付けられた。
知事選では、データセンターを巡る問題も主要争点として浮上している。Pew Research Centerによると、4月時点でオハイオ州内のデータセンターは166カ所あり、全米でも最多水準だった。
同州にはCipher Mining、Bitdeer、BIT Miningなど暗号資産マイニング事業者も複数の拠点を構える。一方で、地域内でのデータセンター建設には住民の支持が広がっていないとの世論も確認された。
ラマスワミ氏は8月、データセンターが地域社会に進出する場合でも、住民の電気料金負担が生じないようにし、固定資産税も引き下げると約束した。これに対し、民主党候補のエイミー・アクトン氏は「ガス、水道、電気の費用は、オハイオ州の納税者や地域社会ではなく、データセンターと投資家が負担すべきだ」と主張した。暗号資産そのものよりも、電力コストと地域負担が直接的な争点になっている。
選挙情勢は接戦だ。9月22日時点のRealClearPolling平均では、アクトン氏がラマスワミ氏を1ポイント上回った。Kalshiの予測市場契約には200万ドル超が投じられ、民主党候補の勝利確率は66%を織り込んだ。Polymarketでも同様の傾向がみられた。
こうした状況から、ラマスワミ氏が暗号資産支持を撤回したわけではないものの、選挙終盤に向けたメッセージの優先順位は変わったとみられる。業界からの資金支援や自身の保有資産は維持しつつも、有権者にとっては暗号資産より、データセンターや地域コスト負担といった生活に直結する課題の方が大きな争点になっている。