米株式市場では、米国債利回りが急上昇するなかでも株価指数が高値圏を維持する展開が続いている。背景には、Nvidia、Microsoft、MetaといったAI関連の大型株の上昇がある。少数の主力株が指数を押し上げる一方で、債券市場との温度差が広がっているとの見方が出ている。
CNBCが5日(現地時間)に伝えたところによると、同局の投資クラブ司会者ジム・クレイマー氏は、この日の米市場について通常とは異なる値動きがみられたと指摘した。
ナスダック総合指数はこの日、約1%上昇して過去最高値で取引を終えた。S&P500種株価指数も0.66%高となり、8月13日に付けた終値ベースの最高値まで0.3%差に迫った。
一方で、米10年国債利回りは5.34%を上回り、30年国債利回りも5.7%近辺まで上昇した。原油価格が下落するなかでも、国債利回りの上昇には歯止めがかからなかった。
クレイマー氏は、こうした動きが「イランとの戦争」勃発後にみられた従来の市場パターンとは異なるとみている。一般に原油安はインフレ懸念を和らげ、国債利回りの上昇圧力を弱める要因とされるが、この日は利回り上昇と同時にナスダック、S&P500ともに上昇した。
相場をけん引したのはMeta、Microsoft、Nvidiaの3銘柄だった。Metaは1.9%、Microsoftは1.5%、Nvidiaは2.1%それぞれ上昇し、Nvidiaは5月以来となる終値ベースの過去最高値を更新した。
クレイマー氏は、指数上昇の背景として少数大型株への極端な集中を挙げた。Nvidia、Microsoft、Metaについて「非常に大きな勝者が生み出した相当なゆがみがある」と述べ、金利上昇の影響を受ける市場全体の弱さが指数には十分反映されていないとの認識を示した。
実際、先週末時点でNvidiaの構成比はS&P500の約8.5%、Microsoftは約5.8%、Metaは約2.4%に達し、3銘柄合計では約17%を占める。時価総額加重型の指数では、こうした大型株の上昇だけでS&P500やナスダックの強さが演出されやすい。
クレイマー氏は個別銘柄の上昇材料にも触れた。Nvidiaについては、最新チップが顧客企業に高い収益をもたらしていると評価。SpaceXがNvidia製半導体を基盤とする大規模コンピューティングクラスターを構築している点も挙げた。
さらに、そのクラスターの計算資源をAI開発企業向けに提供し、収益化につなげようとする動きがあるとも述べた。
Microsoftについては、AIアシスタント「Copilot」を巡る投資家の見方が改善していることが追い風になっていると分析した。Metaに関しては、個人向けエージェントアプリ「Muse」への期待に加え、中小企業との関係強化の可能性が相場を支えていると説明した。
もっともクレイマー氏は、S&P500やナスダックの上昇を市場全体の安定シグナルと受け止めるべきではないと強調した。金利上昇の重荷は、すでに指数を構成する多くの銘柄に表れているという。
例として挙げたのが、伝統的なディフェンシブ株や多くの公益株の弱さだ。これらは安定配当を求める投資家に選ばれやすいが、足元では国債利回りが数カ月前より高水準にあり、債券の相対的な魅力が増しているとした。
クレイマー氏は「多くの企業の株価は、金利が『債券を売るのは明らかに愚かだ』と言える水準に達するまで上がりにくい」と語った。
国債売りの背景としては、政府の大規模な資金調達需要に加え、データセンタープロジェクトに伴う資金需要、ヘッジファンドによる国債空売りの可能性などが取り沙汰されている。先週は市場予想を下回る雇用指標が発表されたにもかかわらず、利回り低下の効果が1日も続かなかったことも、債券市場の重さを示す材料として挙げられた。
クレイマー氏は、今後の米株の方向性を見極めるうえでは、株価指数よりも債券市場を注意深くみるべきだと主張した。「結論は一つだ。これまで債券の売り手は決して愚かではなかった。次の方向を示すのは彼らだ」と述べた。