NOLLYUNIVERSEは、社内AXの取り組みとして151件の課題を起案し、このうち97件を実運用している。公演の座席配置図の変換やイベント情報の集約など、現場主導の業務自動化を進めており、自社集計では月約3600時間の業務削減効果が出ているという。
同社のキム・ジュボン AXエクセレンスチームリーダーは29日、Digital Todayがソウル・COEXで開催したカンファレンス「Digital Insight 2026」で講演し、社内AXの導入事例と成果を紹介した。
同社が社内業務の変革に着手した背景には、旅行、レジャー、文化事業の運営現場に手作業が多く残っていた事情がある。提携先や公演企画会社から届く文書の形式が統一されておらず、担当者が資料を照合しながら転記する作業が発生していた。個別業務ごとの規模が小さいため、開発の優先順位が上がりにくいケースも少なくなかったという。
キム氏は、担当者が1人欠けるだけで代替が難しい業務も多かったと説明。そのうえで、「B2Cに進む前に、まず自分たちの働き方を変える必要がある」との考えから、社内AXを推進したと語った。
2025年11月には、Yanolja Groupとして社内AIコンテストを開催した。グループ各社から342人が74チームで参加し、開発者と非開発者が混成したチームには加点を設けた。現場業務を理解する社員と実装できる社員が協力し、課題解決に取り組む体制を促したとしている。
現場発のツールの代表例が、公演の座席配置図を変換するツールだ。従来は、公演企画会社から送られてきた配置図を担当者が社内登録用の様式に合わせて手作業で移し替えていた。現在はツールが会場ごとの共通ルールを反映して登録用ファイルを自動作成し、担当者は例外エリアの確認に集中できるようになった。
大規模会場では、この作業に従来6〜8時間かかっていた。デモでは変換自体は約5分で完了した。ただし精度は約90%で、公演ごとに異なるエリア表記などは担当者による確認と修正が必要だ。ツールは現在も現場で検証を進めている。
全国イベントカレンダーも、企画担当者がAIを活用して自ら作成したツールの一つだ。地域ごとの祭りや公演日程を集約し、宿泊需要に影響しうるイベントを把握するために使う。キム氏によると、従来の手法で企画から開発まで進めれば約130時間を要する作業だったが、約3時間で完了したという。開発部門の対応を待たず、企画担当者が必要な画面を自ら実装した事例だとしている。
公演会場のチケット受け取り窓口ごとに予約者を振り分けるツールも、運営担当者が開発した。約5100人規模の公演では、これまで氏名別リストの分割に4〜5時間かかっていたが、ツール導入後は窓口数などの条件を変えながら、割り当て結果を即時に算出できるようになった。
また、公演案内の内容をカスタマーセンター向けQ&Aに整理するツールでは、担当組織の集計ベースで公演1件当たり約180分かかっていた作業を約5分に短縮したという。
同社によると、これまで30の組織・部門がAX課題151件を登録し、このうち97件を業務に導入した。月約3600時間という削減効果は、各課題の担当者が導入前後の所要時間を比較して算出した自社集計に基づく。
質疑応答では、非開発者が作成したツールにAPIキーや個人情報を誤って入力し、セキュリティチームが検知した事例も紹介された。キム氏は「最も大変だったのは予算面だ」と述べ、AI利用の拡大で当初予算を超過し、追加予算の確保には生産性向上の効果を立証する必要があったと説明した。
ツールの数が増えるにつれ、他組織がすでに作成した機能を重複開発したり、開発後の保守を担う人材が不在になったりする問題も表面化した。NOLLYUNIVERSEは、AXエクセレンスチームと社内ポータル「AX Hub」を通じて、各組織のツールや活用事例を集約し、再利用を支援している。現場で直接開発できる課題には教育やテンプレートを提供し、システム変更が必要な案件は開発組織と連携して対応する。
一方で、すべての業務がAI活用に適しているわけではない。キム氏は、マーケティング向けコピーの自動生成も検討したものの、入力や確認にかかる時間が手作業と大きく変わらず、導入を見送ったと明らかにした。AIを適用して実際に業務時間を削減できるかどうかを、課題選定の基準にしているという。