Waymoのロボタクシー 写真=Waymo

米道路交通安全局(NHTSA)は、自動運転システムの安全性を評価する連邦レベルの性能基準づくりに着手した。米自動車技術者協会(SAE)とコンソーシアム「ASCEND」を立ち上げ、実走行データに基づく共通指標の整備を進める。州ごとに異なる規制対応の負担を抑えつつ、安全性と技術革新の両立を図る狙いだ。

TechCrunchが9月20日付で報じた。NHTSAはSAEと連携し、自動運転システムの性能基準づくりを担うASCENDを発足させた。

現時点では、自動運転システムに人の運転免許試験に相当する統一的な安全評価の枠組みは整っていない。ロボタクシーや自動運転トラック、将来的な個人向け自動運転車への展開を見据える企業は、主に実道路での走行データを基に安全性を示してきた。

NHTSAは、既存の連邦自動車安全基準(FMVSS)だけでは新たな形態の自動運転車に十分対応できないとみている。FMVSSは一般的な乗用車の構造を前提としており、ステアリングやペダル、サイドミラー、ルームミラーを備えないTeslaのCybercabやZooxのロボタクシーのような車両には、そのままでは適用しにくいという。

ジョナサン・モリソンNHTSA局長は、ピッツバーグで開かれた「AI Horizons Summit」で、ASCENDの最優先課題として自動運転システムの能力評価を挙げた。こうした性能基準は将来のFMVSS策定にも反映される可能性があり、連邦政府としての規制基盤の整備につながるとの見方を示した。

基準策定の軸になるのは、安全性の確保とイノベーションの両立だ。モリソン局長は、安全を政策の中心に据えつつ、技術革新を過度に縛らない規制体系を目指すと説明した。

その上で、事故のたびに後追いで規制を積み増す手法や、技術の進化を先回りして画一的に規制するやり方は避ける考えも示した。実走行データに基づき、自動運転システムの能力を客観的に測定できる基準づくりを進める方針だ。

連邦レベルの共通基準には、州や地方政府ごとに異なる要件が広がる状況を抑える効果も期待される。米国では試験運行や商用サービスを巡る規制環境が州ごとに異なり、企業は地域別の対応負担を抱えてきた。

モリソン局長は、自動運転能力の基準整備によって州・地方政府の要求のばらつきを抑え、米国内での技術革新と安全な導入を同時に後押ししたい考えだ。

もっとも、具体的な策定スケジュールや評価手法は公表されていない。今後は、どの走行データを評価対象とするのか、事故回避能力や認知・判断能力をどう測るのか、商用サービスにどの水準を適用するのかを巡って、業界内の議論が本格化しそうだ。

自動運転業界では、規制整備と並行して事業拡大の動きも続いている。May Mobilityは、特別目的買収会社(SPAC)のACP Holdings Acquisitionとの合併を通じて上場する計画を示した。取引が完了すれば3億ドル超を調達し、企業価値は約14億ドルと見込まれる。

May Mobilityは現在、米国3地域で自動運転のToyota Siennaを運用している。上場が実現すれば、米国で自動運転配車サービスを主軸とする初の上場企業になる可能性がある。

ロボタクシー事業の拡大も続く。Waymoは、突発的な洪水で車両1台が流失してから約5カ月後、テキサス州サンアントニオでロボタクシーサービスを再開した。ラスベガスでは新サービスを開始し、シンガポールでは地図作成と試験走行に入る計画も明らかにしている。

Amazon傘下のZooxは、ラスベガスで商用ロボタクシー車両を100台までに制限されているが、この制限は25日に終了する予定で、サービス拡大に向けた動きが注目されている。

完成車メーカーと自動運転技術企業の協業も広がる。Lucid Motorsは欧州のモビリティプラットフォームBolttと協力し、少なくとも2万5000台の完全自動運転車を配備する計画を進めている。車両はLucidが開発中のミッドサイズEVプラットフォームをベースとし、従来より小型で低コストの構造を目指す。

米国の自動運転産業は、技術開発やサービス拡大の段階を超え、共通の安全基準整備という新局面を迎えた。連邦レベルの性能基準が実際の規則に結び付けば、自動運転車の設計や試験手法に加え、ロボタクシーの展開や州別の規制対応にも影響を及ぼす可能性がある。

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