金融監督院は、金融消費者保護の重点を事後救済から事前予防へ移す。金融業界で苦情や紛争が増えていることに加え、短期実績を重視する営業慣行がなお残っていると判断したためだ。AIを活用した苦情・紛争処理の総合ポータルを2027年1月に本格稼働させるほか、市場監視や制度改善もあわせて強化する。
金融監督院は17日、ソウル・汝矣島の本院で「金融消費者保護の成果に関する国民向け報告大会」を開いた。会場には一般消費者のほか、金融業界や関係機関の関係者、外部専門家ら約250人が参加した。
イ・チャンジン院長は、消費者中心の組織改編、事前予防型の監督体制への転換、生活に身近な金融犯罪への対応、金融包摂の強化などを進めてきたと説明した。一方で、苦情と紛争は増加傾向が続き、短期実績偏重の営業慣行も残っているとして、消費者保護が金融会社の経営や業務全般に十分定着していないとの認識を示した。
同氏は「消費者が金融の現場で体感する変化こそが真の成果だ」と述べ、現場の不便や批判を今後の政策に反映していく方針を明らかにした。
金融監督院が同日公表した直近1年間の消費者保護の実績には、苦情・紛争の処理過程で把握した問題を制度改善につなげた事例が盛り込まれた。
2025年7月から2026年8月までに、計94件を制度改善などに反映した。紛争調整委員会の運営は定例化し、専任部署と人員も拡充した。Tmon・WeMakePrice関連の紛争では、分割決済後にサービスを利用できなかった消費者に申し込み撤回権を認め、同種事案1万1696件、132億2000万ウォンの処理基準を示した。
金融商品の設計から販売、事後管理に至る各段階でも、消費者保護体制の整備を進めた。商品設計・製造段階では製造・販売事業者の義務を具体化し、販売段階では中核リスクを中心に説明資料や加入手続きを見直した。高リスク商品の損失リスク、保険金支給基準の変更、カード特典の適用条件など、重要情報に関する事後案内も強化した。
AIを活用した金融犯罪対策も拡大した。金融監督院は、ボイスフィッシングの情報共有・分析AIプラットフォーム「ASAP」を活用し、2025年10月から2026年7月までに663億6000万ウォンの被害を防いだと発表した。違法私金融分野では、違法貸付契約の無効確認書の発給や、無効化訴訟の支援なども進めている。
デジタル金融分野では、2026年2月に統合管制システム「FIRST」を稼働させ、4月には暗号資産の気配・約定情報などを分析するモニタリングシステム「ORBIT」を構築した。先月からは、不公正取引が疑われる銘柄などを対象に、AIを活用した市場監視体制も運用している。
苦情・紛争処理の迅速化と品質向上を狙う「AI基盤の苦情・紛争処理総合ポータル」は、2027年1月に本格稼働する予定だ。
今後は、金融会社の内部で事前予防型の消費者保護体制が実際に機能しているかを点検するため、懇談会や実態調査を継続する方針だ。「金融監督AX戦略ロードマップ」を通じて、デジタル監督能力の底上げも進める。AI苦情ポータルを活用した苦情・紛争処理の高度化に加え、金融会社の自主的な処理能力の強化も促す考えだ。
会合では、消費者保護は法令順守にとどまらず、金融会社の商品・サービス競争力と結び付けるべきだとの指摘も出た。
チャン・クォニョンBoston Consulting Group(BCG)Korea代表は「国内金融業界の消費者中心経営はまだ初期段階だ」としたうえで、「消費者保護の判断基準を、法令順守の可否ではなく『消費者が実際に得る結果(Good Customer Outcome)』へ転換する必要がある」と述べた。