Novo Nordiskは9月16日、Anthropicと協業し、同社の生成AI「Claude」を研究開発に導入すると発表した。生物学的推論に特化した専用AIツールを共同開発し、創薬から上市までに要する時間の短縮を目指す。あわせて、データガバナンスと人による監督体制も整備する。
今回の協業の柱は、製薬研究の現場に合わせたカスタムAIツールの開発だ。Cryptopolitanによると、Novo Nordiskの科学者や計算研究チームが創薬の現場で直面する課題を提示し、それを基に両社が研究用途に最適化したツールを共同開発する。重点領域は生物学的推論としている。
Novo Nordiskは、ソフトウェア開発にもAnthropicの最新AIモデルを活用する。AIによるコーディング支援を、全社的なAI活用拡大に向けた重要な段階と位置付ける。まずは一部の研究開発ワークフローで「Claude Science」を試験導入し、効果の大きい領域から展開の可能性を検証する方針だ。
一方で、導入拡大に合わせてガバナンス面も強化する。両社は、データガバナンスのルールと人による監督体制を協業の枠組みに組み込んだ。Novo Nordiskは、AI活用が自社のコンプライアンスおよび倫理基準の範囲内で行われるよう設計したと説明している。
Claude Scienceは独立した新モデルではなく、Anthropicが提供する研究者向けワークスペースだ。既存のClaudeモデル群を基盤としており、Opus 4.8も含む。60超の科学データベースと連携し、ゲノミクス、プロテオミクス、構造生物学、ケモインフォマティクス向けにあらかじめ用意したツールを利用できる。
構成としては、メインのエージェントがタスクごとに下位エージェントを生成し、別のレビュー用エージェントが引用や計算結果を点検する仕組みを採る。
Anthropicは初期ユーザーの事例も紹介した。Allen InstituteとUCSF Brain Tumor Centerは、複雑な分析に要する時間を大幅に短縮できたと評価したという。Novo Nordiskは、こうした生産性向上の効果を自社の研究開発にも適用できるか見極める考えとみられる。
両社の経営トップも協業の狙いを強調した。Novo Nordiskの社長兼CEO、マイク・ドゥスタール氏は、Anthropicとの協業によって研究開発体制を強化し、慢性疾患の患者に新たな健康ソリューションをより早く届けられるとの考えを示した。AIが研究開発の生産性を高め、研究から製品化までの時間短縮につながるとも述べた。
Anthropicの共同創業者兼CEO、ダリオ・アモデイ氏は、AIの性能向上が医学と生物学の進展を大きく前倒しする可能性があると指摘した。「AIの能力向上には、生物学と医学における100年分のイノベーションを10年に圧縮し得る潜在力がある」としている。
Novo NordiskがAIを創薬分野に取り入れるのは今回が初めてではない。同社は今年初め、OpenAIと創薬分野でのAI活用を検討する契約を締結し、Amazon Web Services(AWS)とはAIイノベーションハブも構築した。複数のAI企業との連携を通じ、製薬研究開発全体にAIを組み込む取り組みを進めている。
Anthropicも製薬業界での導入を広げている。Bristol Myers Squibbの従業員向けに、研究と創薬開発に利用するClaudeへのアクセスを提供したのに続き、今回Novo Nordiskとの協業に踏み切った。世界で6万7000人超を雇用するNovo Nordiskが、研究開発の現場でどのような成果を示すかが注目される。