米下院は、AIデータセンターの急増に伴う電力網整備費を事業者側に負担させる超党派法案を、早ければ今週中にも採決する見通しだ。大規模施設向けの発電・送配電インフラの費用が、家庭や小規模事業者の電気料金に転嫁されるのを防ぐのが狙いだ。
16日付のCryptopolitanによると、法案の名称は「料金支払者保護法」。電力使用量が100メガワット(MW)を超える大規模AIデータセンターを対象に、新たな電力網や送電線などの増強費用を負担させる内容だ。データセンターの新設に伴って電力設備への追加投資が必要になった場合でも、そのコストを一般家庭や小規模事業者に転嫁しにくくする制度設計を州に促す。
背景には、米国の電力需要の拡大がある。米エネルギー情報局(EIA)は、米国の電力需要が2025年に4兆1950億kWh、2026年に4兆2700億kWh、2027年に4兆3490億kWhへ増えると予測している。需要増の要因として、AIや暗号資産関連のデータセンター拡大に加え、建物や輸送部門の電化を挙げた。
法案を提出したゲイブ・エバンス下院議員は、大規模データセンターが必要とする電力インフラについて、事業者が費用を全面的に負担すべきだと主張した。データセンターが将来、稼働縮小や撤退に踏み切った場合でも、発電設備や送配電設備の費用だけが残る可能性があり、その負担を一般の需要家に転嫁すべきではないという考えだ。
共同提出者のキャシー・キャスター下院議員も、データセンター拡大に伴う電気料金負担を地域住民に回すべきではないとの立場を示した。とりわけフロリダ州のようにデータセンター誘致が活発な地域では、大口需要の増加を受け、家計や小規模事業者への影響を巡る議論が強まっているという。
法案には、州ごとの制度整備を促す内容も盛り込まれた。データセンター関連の規定が未整備の州に対し、公聴会を経て地域ごとの基準を設けるよう求めている。下院指導部はこの法案を迅速処理手続きにかけるとみられる。
AIデータセンターの大型化で、電力会社側の負担も増している。サーバーだけでなく冷却設備でも大量の電力を消費するためだ。計画によっては数百MW規模の電力を必要とし、発電所の新増設に加えて送配電網への大規模投資が必要になるケースもある。
争点となっているのは、こうした増強費を誰が負担するかだ。電力網整備費をすべての利用者に広く配分すれば、データセンターと直接関係のない家庭や中小企業の電気料金まで押し上げかねない。今回の法案は、こうした費用負担のあり方を見直すものと位置付けられる。
州レベルでも対応が進む。ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事は、データセンターを誘致する自治体に対し、技術企業から1MW当たり最低100万ドル(約1億5000万円)の地域投資を確約させるよう促した。50MW規模のデータセンターであれば、5000万ドル(約75億円)相当の地域投資を求める計算になる。
ニューヨーク州はあわせて、自治体が大手技術企業と交渉する際に活用できるガイドラインも整備した。ホークル知事は、AI産業の成長が地域社会や家計の負担増につながってはならないとの考えを示している。
米国のデータセンター誘致競争は、投資や雇用の確保にとどまらず、電気料金や電力網コストを誰が負担するかを問う局面に入っている。法案が成立すれば、大規模データセンターの費用負担の原則に一定の変化をもたらす可能性がある。