量子耐性署名の導入にとどまらず、既存ルールをどこまで見直すかも論点になっている。画像=Reve AI

ビットコインで、量子コンピュータ時代を見据えたルール整備を巡る議論が広がっている。焦点となっているのは、量子耐性署名を導入するだけで十分なのか、それとも量子攻撃に弱い既存コインの支出まで制限すべきかという点だ。ネットワークの安全性を優先するべきだという声がある一方で、既存保有者の権利を損なうとの反発も強い。

Bitcoin Magazineが16日(現地時間)に報じたところによると、現在のビットコインで使われているECDSAとシュノア署名は、十分に強力な量子コンピュータが実用化された場合、攻撃対象になり得る。特に、公開鍵がすでに明らかになっている旧来のP2PK出力やTaproot出力、公開鍵を再利用したアドレスなどが脆弱とみられている。

問題となるのは、量子コンピュータが実際の攻撃手段として使われた場合だ。公開鍵から秘密鍵を導き出し、コインを奪取できる可能性が生じるためだ。同記事は、利用者が量子耐性方式へ移行したとしても、少なくとも260万BTCが引き続きリスクにさらされる可能性があると分析した。このうち約170万BTCは、旧来のP2PK出力に含まれると推定している。

こうした見方を踏まえ、一部の開発者は量子耐性アドレスを追加するだけでは不十分だと主張している。脆弱なコインが残れば、量子攻撃によって奪われたコインが市場で一斉に売却され、価格形成だけでなくビットコインネットワークへの信認にも影響しかねないという。

一方で、既存コインを強制的に凍結することには強い異論もある。有効な署名で移転可能なコインを、ある時点から使えなくするのは、事実上の所有権制限に当たるという指摘だ。長期保管中のコインや相続手続き中の資産、単に長期間動いていないウォレットを、量子攻撃リスクの高いコインと明確に区別するのは難しいとの見方もある。

代表的な対応案として挙がっているのがBIP-361だ。量子耐性アドレスの導入後、新規コインが脆弱なアドレスへ送られることを制限し、一定の猶予期間を設けたうえで、既存のECDSAやシュノア署名に依存するコインの支出を段階的に止める構想とされる。

もっとも、この案についても即時適用は現実的ではなく、十分な準備期間が必要だとの指摘が出ている。量子耐性暗号は既存方式より鍵や署名のサイズが大きくなる可能性があり、オンチェーンコストの上昇につながりかねないためだ。将来的に新たな暗号方式へ再び移行が必要になる可能性も考慮すべきだとの意見もある。分析の一部では、すべてのUTXOを量子耐性の仕組みに移すには数年かかる可能性があるとしている。

強制凍結と現行方式の維持の間を取る折衷案も示されている。新たに作られる脆弱な出力だけを制限する案のほか、一定期間コインをロックする案、旧来のP2PKコインについて1ブロック当たりの支出量に上限を設ける案などが候補として挙がっている。

今回の論点は、量子コンピュータがいつビットコインを脅かすかという予測そのものより、その前にどのような対応ルールで合意できるかにある。現時点では、特定の提案を直ちに採用するよりも、アドレスの再利用を減らしながら量子耐性署名や復旧手段の研究を進め、長期的な移行手順を準備すべきだとの見方が大勢となっている。

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