米連邦準備制度理事会(FRB)は16日(現地時間)、政策金利を0.25ポイント引き上げ、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を3.75〜4.00%とした。利上げは久しぶり。市場予想通りの決定だったが、発表後の暗号資産市場は下落し、ビットコインも上昇分を打ち消した。
FF金利の誘導目標は従来の3.50〜3.75%から引き上げられた。会合前には、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のFedWatchで利上げ確率が93%まで上昇しており、市場では利上げ観測が大勢を占めていた。1カ月前は50%を下回っていたが、直近の物価指標を受けて見方が急速に変わった。今回の決定には、連邦公開市場委員会(FOMC)の12委員全員が賛成した。
FRBは声明で、米経済は引き続き堅調なペースで拡大しているとの認識を示した。雇用の増加は労働力人口の伸びに沿ったもので、物価はなお高水準にあると説明。今回の措置が、インフレ率を2%目標へ戻す一助になるとした。
暗号資産市場全体は同日、約2.18%下落した。ビットコインは発表直後に7万5900ドル近辺まで上昇したものの、その後は数分で7万5100ドル前後まで押し戻された。ただ、市場が注目していた7万3500〜7万5600ドルのサポート水準の下限は維持した。
利上げの背景には、足元で強めに出た物価指標がある。全米製造業協会(NAM)によると、8月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比5.4%上昇し、7月の4.8%から伸びが拡大した。財価格に限ると前月比1.1%上昇し、上昇分の4分の3超はエネルギーコストの増加によるものだった。
続いて公表された8月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で3.4%上昇と7月と同水準だった一方、前月比では0.1%から0.4%へ加速した。ガソリン価格が月次上昇分の3分の1を占めた。食品とエネルギーを除くコア指数も、前月比で0.2%から0.3%に伸びが強まった。
こうした流れを受け、金融機関の見通しも一段とタカ派に傾いた。今週公表されたウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の調査では、Barclays、Citigroup、JPMorgan、Morgan Stanley、UBSを含む大手銀行の多くが、年末までに合計0.50ポイントの追加利上げを予想した。Bank of America(BoA)、Deutsche Bank、RBCは0.75ポイントの引き締めを見込んでいる。
これまで据え置きを想定していたGoldman SachsとPiper Sandlerも、物価指標の発表後に利上げ予想へと転じた。
原油価格が1バレル=100ドルを再び上回ったことも重しとなった。イランとの衝突の影響でエネルギー価格への上昇圧力が強まり、FRBが様子見を続けにくい状況になったという。
7月会合では政策金利は据え置かれたが、採決は9対3に割れ、当時から3人の委員が利上げを主張していた。さらに、8月の雇用統計が市場予想を上回り、追加引き締め観測を後押しした。
政治からの圧力も続いている。ドナルド・トランプ米大統領は昨年、ケビン・ウォーシュFRB議長を指名する前に「利下げを望む人物を据える」と述べる一方、ウォーシュ氏には独立性も求めていた。ただ、ウォーシュ氏は就任後3回目の会合で利上げを選択した。
エリザベス・ウォーレン上院議員はCNNに対し、トランプ政権のイラン関連の衝突や関税政策がFRBを追い込んだと批判した。利上げでも据え置きでも、一般家庭はクレジットカード債務や住宅ローン費用の増加という負担を避けにくいとも指摘している。
暗号資産市場は発表前から軟調だった。ビットコインは数時間にわたり7万5200ドル前後で推移し、9月高値の8万2000ドル水準からは距離があった。前日には、クラリティ法案が上院の終結投票を通過できなかったことも下押し材料となった。
暗号資産の恐怖・強欲指数は、数週間前の「極端な強欲」から「中立」へ低下した。前日も69から51へ下落している。
次回のFOMCは10月27〜28日に開かれる。続く12月8〜9日の会合ではドット・プロットの公表も予定されており、今回の利上げが年内最後となるのか、それとも追加利上げの出発点となるのかが改めて市場の焦点となりそうだ。